専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

21年のストライキは避けられない?…「歓喜なき開幕」を招いたMLB選手会とオーナー側の遺恨の歴史

出野哲也

2020.06.26

 このストライキで深刻なファン離れを招いた反省から、オーナー側と選手会は協調路線を取り続けてきた。2000年代以降は収益分配制度の導入により戦力均衡が進み、さらにはテレビ放映権料の急騰やインターネットサービスの成功もあり、MLBは少なくとも財政面では空前の繁栄を謳歌した。01年のリーグ総収入は35.8億ドルだったのが18年は103億ドルまで膨れ上がり、文字通り右肩上がりの成長だった。選手年俸も上がり、今や球界最高給の選手は日本円にして40億円以上ものサラリーを手にしている。

 しかし、よくよく見ると、MLBの総収入はここ20年で約3倍になったのに対し、選手年俸の伸び率は2倍強でしかない。18年の総収入における年俸の割合は44%で、NBAの51%、NFLの48%と比べても低く抑えられている。

 特に18~19年オフのFA市場は史上稀に見る厳冬で、一部のスーパースターを除く大半の選手が予想を大幅に下回る契約しか得られなかった。この時、選手会関係者からはオーナー側の「共謀」を疑う声が出た。80年代、各球団のオーナーが秘密裏に有力FA選手を獲得しないよう申し合わせたことが実際にあったからだ。のちに悪事露見となり、オーナー側は選手会に総額1億ドル以上もの罰金を払った。

 
 実際には、多くのFA選手が敬遠されたのは共謀ではなく、各球団が効果的な経営をするようになったためだったが、オーナー側の「前科」を考えれば選手会が疑いの目を向けるのも無理はない。それに、事実として選手の取り分が少なくなっているのだから、不満を覚えるのは当然とも言える。

 一方、オーナー側はオーナー側で選手会に鬱屈した感情を抱いていた。ミラーが陣頭指揮を執るようになってからは、労使紛争で連敗に次ぐ連敗。今回のコロナ禍を、選手会側への積年の恨みを晴らす絶好の機会と考えているオーナーは一人や二人ではないはずだ。

 オーナーと選手会の対立を「億万長者と百万長者の喧嘩」と一緒くたにする声もあるが、一般市民の感覚とかけ離れているのは間違いなくオーナーの方だろう。6月に入り、ワシントン・ナショナルズのオーナーがマイナーリーガーの給与を減額すると発表。ただでさえ低報酬に甘んじている彼らのサラリーを下げたところで節約できる額などたかが知れているにもかかわらずだ。この時はナショナルズの選手有志一同がカンパで減額分を補うことを表明。世論の逆風を受け、オーナーは方針を撤回する羽目になった。
 

DAZNなら「プロ野球」「Jリーグ」「CL」「F1」「WTAツアー」が見放題!充実のコンテンツを確認できる1か月無料体験はこちらから

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号