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MLB

ツインズが人種差別主義者だった元オーナーの銅像を本拠地から撤去。レッズの元オーナーの名を冠した球場名にも反発が

宇根夏樹

2020.06.23

レッズの元オーナーであるショットは人種差別の他にも、ヒトラーを擁護するなど問題発言が多かった。写真:Getty Images

レッズの元オーナーであるショットは人種差別の他にも、ヒトラーを擁護するなど問題発言が多かった。写真:Getty Images

 今年2月のトレードにより、前田健太はドジャースからツインズへと移籍した。前田の新たな本拠地となるターゲット・フィールドの外には、他の多くの球場と同じように、いくつもの銅像が設置されている。元選手のハーモン・キルブルー、ロッド・カルー、カービー・パケット、ケント・ハーベックの他に、元監督のトム・ケリーとマスコットのTCベアー、そして元オーナーのカルビン・グリフィスとカール&エロイーズ・ポーラッド夫妻だ。

 ただ、前田の登板を観ようと現地を訪れても、そのうちの1体は目にすることができない。ツインズは先日、グリフィスの銅像を撤去すると発表した。

 グリフィスは、ミネソタに球団をもたらした人物だ。ワシントン・セネタースのオーナーだったグリフィスは、1961年に球団をワシントンDCからミネソタへ移転させた。ツインズというチーム名に限れば、初代オーナーとも言える。けれども、グリフィスは人種差別主義者だった。移転時には「なぜミネソタへ来たかを言おう。ここには、黒人が1万5000人しかいない。(中略)ここには、優秀で勤勉な白人がいる」と発言している。

 先月、黒人男性が白人の警察官に首を押さえつけられて亡くなった事件が起きたのは、ツインズが本拠を構えるミネソタ州ミネアポリスだ。ツインズは声明文の中で「ツインズの歴史からグリフィスを消去することはできないが、銅像の撤去は重要かつ必要なステップ」と綴り、最後に「過去、現在、未来のいずれにおいても、ツインズのテリトリー(領域)で、人種差別、不平等、不正は許されない」と結んだ。
 
 こうした動きは、何もミネソタに限らない。シンシナティでは、大学に対して球場の名称変更を求める声が上がっている。2004年に開場したシンシナティ大の球場は、その数ヵ月前に死去したシンシナティ・レッズの元オーナーにちなんでマージ・ショット・スタジアムと名づけられた。地元出身でもあるショットは、84~99年にレッズのオーナーを務めたが、グリフィスと同じく人種差別主義者だった。日常的にユダヤ人や黒人、日本人を蔑視する発言を繰り返し、これを問題視したコミッショナーから、オーナーの資格停止処分を科されたこともあった。

 Change.orgを使って名称変更の署名を集めているのは、17~18年にシンシナティ大で外野手としてプレーしたジョーダン・レイミーだ。現在のチームのキャプテンで、リリーフ投手のネイサン・ムーアも、このサイトでの署名を呼びかけている。シンシナティ大出身のメジャーリーガーであるジョシュ・ハリソン(フィリーズ)や、東北楽天でもプレーしたケビン・ユーキリスもこれに賛同。ハリソンはアフリカン・アメリカン、ユーキリスはユダヤ系アメリカン。ショットはかつて、どちらの人種についても差別発言をしている。彼女の差別主義は処分を科されても改善されることがなく、結局最後は球団を手放さざるを得なくなった。そんな彼女の名を冠したスタジアムに対して彼らが反発するのは、無理からぬことだろう。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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