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高校野球

「65歳になっても、サヨナラ勝ちは嬉しいもんよ」百戦錬磨の馬淵監督率いる明徳義塾が見せつけた“試合巧者“ぶり

氏原英明

2020.08.10

 先頭が死球と言っても、3ボール1ストライクからだったから、ほとんど四球のようなものだ。続く4番の新沢颯真にレフト前安打を打たれて一、二塁のピンチ。1アウト後、6番の玉城琉を左翼フライに打ち取ったのだが、明徳義塾の二塁走者が三塁を狙うと鳥取城北の守備が乱れて1点を献上。さらに、次打者に中前適時打を許し、得点差はたちまち1点になった

 9回表、鳥取城北の攻撃が1死一塁からの併殺打で潰えてしまうと、9回裏は明徳義塾のムードだった。2死一、二塁から4番・新沢が右翼オーバーのサヨナラ適時三塁打。明徳義塾が鮮やかに試合を制したのである。

 鳥取城北・山木博之監督がナインの健闘を称えながらも口にしたのは、やはり明徳義塾の試合巧者ぶりだ。
 
「1回に先制ができた時にはこっちに流れを持ってこれるかなと思ったんですけど、2回以降は(明徳義塾の先発)新地君がうちのバッターを見ながら投げてきましたし、守りも要所でいいところを守っておられて目に見えないファインプレーがいくつもありました。またヒットが出ない中で点数を取っていく巧さは甲子園で勝っていないウチのようなチームとの違いを感じました。勝負どころをよく分かっているのかなと」

 鳥取城北は11安打で5得点。決して効率は悪くはないのだが、3安打に抑えながら11個の四死球を出してしまっては明徳義塾の巧さにやられてしまうのは当然かもしれない。捕手の安保は悔しさをこう絞り出した。

「明徳打線は厳しい球はファウルで粘って、甘く入ってきたところをしっかり自分のバッティングをしてくる。盗塁や送りバントを一発で決めてくるし、隙も突いてくる。9回は1死一塁でうちも向こうも2番バッターだったんですけど、こっちはダブルプレーで、相手は四球を選んできた。そこの差が出たかなと思います」

 関西など他地域出身の選手が数多くいる両校は、甲子園を目指す球児たちが集まるという意味においては似通っている。しかし、百戦錬磨の指揮官が鍛え上げた明徳義塾は「プロで伸びない」と揶揄されることも少なくはないながらも、高校野球の世界ではやはり強者だった。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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