高卒2年目にして、藤原の中には「どのようにして結果を残していくか」という確信めいたものがあった。そしてその先に見据えたのが、昨年は壁を感じた技術力の習得だ。
詳しく言えば、トップを高い位置に保ち、上から叩くスタイルをやめ、バットを意識的に下から出すようにした。アッパースウィングと言うほどではないが、ピッチャーが投じたボールに対して、上から叩く一点集中の打撃ではなく、線をなぞるように打つことでコンタクトを意識したわけだ。
ただ、コンパクトなスウィングにしたわけではない。高校時代からの専売特許だったフルスウィングするスタイルを維持しながら、バットにボールを当てるまでのアプローチを変えたのである。
この打ち方は、現レッズの秋山翔吾がシーズン最多安打日本記録を樹立した2015年に見出したものと同じだ。当時の秋山は大卒4年目。高卒2年目の藤原がすでにそこに気付いているというのは、かなりレベルの高い話である。藤原はこのフォーム変更の手応えを、シーズン前にこう語っている。
「フォームを変えた時の手応えはありました。上からと横(下)からバットを出すのでは、かなり変わるので難しいところもあったんですけど、押し込めている感じがある。こっちの方が合っているのかなと思います。ホームランか打率かと問われると、より多く出塁したいですから、打率を取ると思うんですけど、ただホームランを打ちたいというのは正直あります。2ケタ本塁打は意識したいです」
今、宣言通りにその技術力を見せているのだから、やはり藤原の打棒には驚かずにはいられない。もちろん、これからはそう簡単にいかない部分も出てくるだろうが、苦しい経験もまた、彼にとって財産になっていくことだろう。コロナ感染の「代替要員」に収まらないでおこうとする、彼の気持ちの強さ。それが技術を押し上げるのだ。
1月に藤原のインタビューをした時、「守備と走塁は高いレベルをすでに持っているから、守備・代走要員として開幕一軍メンバ―に入ることも可能ですよね」と投げかけると、彼が一瞬ムッとしたのをよく覚えている。強烈な不快感というほどではないが、「そんなところは目指していない」と言いたげな視線を向けてきた。そして力強く、こう返してきたのだった。
「そこだけで一軍に残ろうとはまったく思わないです、試合に出る限りは、走攻守を信用して使ってもらえる選手になりたいですから」
これもまた、宣言通りだった。プロ入りして、すでに2つも放った初回先頭打者本塁打。このインパクトはチームが優勝争いをする中では、かなり大きなものだ。救世主と言うより、「ロッテの1番は藤原恭大」。そう感じさせるくらいの暴れっぷりを、彼は今見せてくれている。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
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詳しく言えば、トップを高い位置に保ち、上から叩くスタイルをやめ、バットを意識的に下から出すようにした。アッパースウィングと言うほどではないが、ピッチャーが投じたボールに対して、上から叩く一点集中の打撃ではなく、線をなぞるように打つことでコンタクトを意識したわけだ。
ただ、コンパクトなスウィングにしたわけではない。高校時代からの専売特許だったフルスウィングするスタイルを維持しながら、バットにボールを当てるまでのアプローチを変えたのである。
この打ち方は、現レッズの秋山翔吾がシーズン最多安打日本記録を樹立した2015年に見出したものと同じだ。当時の秋山は大卒4年目。高卒2年目の藤原がすでにそこに気付いているというのは、かなりレベルの高い話である。藤原はこのフォーム変更の手応えを、シーズン前にこう語っている。
「フォームを変えた時の手応えはありました。上からと横(下)からバットを出すのでは、かなり変わるので難しいところもあったんですけど、押し込めている感じがある。こっちの方が合っているのかなと思います。ホームランか打率かと問われると、より多く出塁したいですから、打率を取ると思うんですけど、ただホームランを打ちたいというのは正直あります。2ケタ本塁打は意識したいです」
今、宣言通りにその技術力を見せているのだから、やはり藤原の打棒には驚かずにはいられない。もちろん、これからはそう簡単にいかない部分も出てくるだろうが、苦しい経験もまた、彼にとって財産になっていくことだろう。コロナ感染の「代替要員」に収まらないでおこうとする、彼の気持ちの強さ。それが技術を押し上げるのだ。
1月に藤原のインタビューをした時、「守備と走塁は高いレベルをすでに持っているから、守備・代走要員として開幕一軍メンバ―に入ることも可能ですよね」と投げかけると、彼が一瞬ムッとしたのをよく覚えている。強烈な不快感というほどではないが、「そんなところは目指していない」と言いたげな視線を向けてきた。そして力強く、こう返してきたのだった。
「そこだけで一軍に残ろうとはまったく思わないです、試合に出る限りは、走攻守を信用して使ってもらえる選手になりたいですから」
これもまた、宣言通りだった。プロ入りして、すでに2つも放った初回先頭打者本塁打。このインパクトはチームが優勝争いをする中では、かなり大きなものだ。救世主と言うより、「ロッテの1番は藤原恭大」。そう感じさせるくらいの暴れっぷりを、彼は今見せてくれている。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
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