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プロ野球

広島・森下暢仁が球団新人最高額の4300万円でサイン。しかし「アップ額」歴代トップ10は遥かその先!?

SLUGGER編集部

2020.12.08

 その和田に抜かれるまでは、1999年の松坂大輔が両部門で君臨した。高校球界最高のスーパースターはプロ1年目から衝撃的な活躍を見せると、新人王は当然として16勝で高卒新人45年ぶりの最多勝を獲得。“松坂フィーバー”もあって西武の観客動員数は前年比32.5%アップと興行面でも貢献し、1300万円から一気に7000万円の昇給となった。松坂は翌年(新人年から3年連続)も最多勝を獲得し、2年目のオフには1億円を突破。こちらは今も“最速記録”である。

 もっとも、1999年にはもう一人の“怪物”がいた、上原浩治だ。メジャーも獲得を狙った逸材は1年目からシーズン歴代4位タイとなる15連勝を記録するなど、史上10人目・新人3人目となる投手四冠を達成。沢村賞に輝き、「雑草魂」は松坂の「リベンジ」とともに流行語大賞となるなど、こちらも一大センセーションを巻き起こした。時代を考えると、5300万円の増額すら“安く”感じるほどのシーズンだったことは間違いない。

 上原が持っていた巨人のアップ記録を抜いたのが、同じく浪人を経験している菅野智之だったというのも何かの縁だろうか。2011年のドラフトで日本ハムの1位指名を拒否した菅野は一年間の浪人を経て巨人に入団。周囲の声は厳しいものはあったが、どこ吹く風で活躍。何より素晴らしかったのがプレーオフで、広島とのCSファイナルシリーズではセ・リーグCS初の完投完封(9回無失点11奪三振)、楽天との日本シリーズでは24勝0敗1セーブの“神の子”田中将大に黒星をつける好投を見せ、大舞台の強さが大幅昇給につながった。
 
 しかし、この年の菅野は新人王になっていない。ヤクルトの小川泰弘が16勝、勝率.800、3完封でリーグ1位を記録する大活躍を見せたからだ。“球団の違い”もあって小川の2年目の年俸は菅野に及ばなかったものの、こちらも上がり幅は歴代7位としっかり評価されている。

 2013年のセ・リーグ新人王レースでは、高卒ルーキーの阪神・藤浪晋太郎もセ新人史上5人目の2ケタ勝利を挙げるなど、振り返ると大豊作年だった。藤浪はトップ10圏外とはなったものの、1500→4500万円と3000万円増で契約更改している。一方、パ・リーグで新人王を獲得した則本は、新人開幕投手、日本シリーズ勝利投手と田中に次ぐ2番手として大幅昇給を手にした。

 新人のアップ額歴代トップ10では、当たり前だがドラフト1位選手が上位に顔を出している。則本は2位(楽天の1位は森雄大)ではあるものの、明らかに“異質”な存在がアップ額歴代9位の摂津正だろう。

 秋田経法大付高からJR東日本に進んだ摂津は中々プロからのオファーがなく指名漏れも経験。何とプロ入りまで8年の時を要し、ドラフト指名も5位と決して評価は高くなかった。しかしシンカーを武器に開幕一軍入りすると、ファルケンボーグ、馬原孝浩との勝利の方程式「SBM」を形成。リーグ最多70登板、39ホールドポイントを記録して新人王&最優秀中継ぎ投手賞を獲得し、3800万円アップの5000万円でサインしている。

 トップ10全員が投手という結果を見ると、即戦力という面では野手より投手、というのが一つの考え方とも言えるだろうし、野手の育成には時間がかかるとの定説も納得である。そう思うと昨日、高卒4年目で1億円の大台に乗ったヤクルト・村上宗隆の成長速度は改めて尋常ならざるものだろう。

 また、森下はアップ額のトップ10を逃したとはいえ、彼の1年目が素晴らしかったのは誰の目にも明らかだ。ただ、今季の1登板当たりの平均投球数はセ・リーグ最多を数えるなど、勤続疲労だけは気になるところ。今後大きな怪我なく過ごし、どんどん昇給していくことに期待したい。

構成●SLUGGER編集部
 
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