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プロ野球

【プロ野球秘話】南海身売りの1988年、「球界の紳士」と呼ばれた杉浦忠が激怒した夜

北野正樹

2021.01.26

 球団譲渡の一部報道に対し、親会社の南海電鉄とダイエーは完全否定。南海電鉄の吉村茂夫社長(球団オーナー)は「今回の話は、福岡への球団誘致をする人の作り話。九州の人が勝手に言っているだけ」と不快感を示し、ダイエーの中内功社長は「ダイエーにはほかにやるべき仕事がある。ユニードも含めダイエーグループが南海を買収することはあり得ない」と完全否定。さらには「プロ野球は嫌いだ。事実でないことを書かれ告訴したいくらいだ」とまで言い切った。

 そんな膠着状態が続いたある夜、堺市の自宅を訪れた報道関係者に杉浦は声を荒げた。訪れた報道関係者にとっては、確信をもって報じた記事で、しかも譲渡を企てている組織の中には南海電鉄も加わっていることから監督に怒鳴られる筋合いではないのだが、1年目に6位に終わり、2年目は4位、3年目の終盤を控え巻き返しを図ろうとする指揮官にとっては、グラウンド外での話はゲームを邪魔するもの以外、なにものでもなかったに違いない。
 
 事態が動いたのは9月12日の深夜。吉村社長が「▽選手の待遇を改善する▽留任発表している杉浦忠監督の続投▽ホークスの名前を残す」の球団譲渡3条件を一部報道関係者に示唆したことで、一気に球団譲渡の流れが決まった。9月21日には吉村、中内が大阪市内で会談し、両社間の合意事項を発表。10月1日のプロ野球オーナー会議で承認を受け、一連の騒動は幕を閉じた。

 1か月にわたる身売り騒動に、メディアの取材はスポーツを専門とする記者だけでなく、経済部や社会部も巻き込んで熾烈を極め、30年以上たっても「『8月28日』の日付だけは忘れたことがない」という在版スポーツ紙の編集委員もいるほどだ。

 阪急がオリックスへの身売りを発表した「10.19」。この歴史に残る日は、デービスの大麻事件が色濃く反映していた。厚生省近畿地区麻薬取締官事務所神戸分室(現・厚生労働省近畿厚生局麻薬取締部神戸分室)に逮捕されたのは、6月7日。大物メジャーリーガーのドン・マネーが1984年シーズン途中に退団し、急遽来日したデービス。1年目、出場78試合で18本塁打を放ち、2年目は6試合連続本塁打を含む40本塁打(打率.343、109打点)で近鉄の4番打者として活躍したが、大麻事件で球団から解雇され日本球界を去っていった。
 

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