当時、シンシナティ・レッズのクローザーを務めていたロブ・ディブルは、100マイルに迫る剛速球を武器としていたが、コントロールも性格も大荒れで、何度となく乱闘事件を起こしていた"札付き"。一方のルー・ピネラ監督も瞬間湯沸かしとして有名だった。
ある試合でディブルを起用しなかった理由を報道陣に聞かれたピネラ監督は、「肩が痛いと言っていたから」と回答。その直後、ディブルが「そんなことは言っていない」と反論。面子を潰された指揮官は激怒し、報道陣の面前でディブルに襲いかかったのである。周りにいた選手たちに引き離されるまで、ピネラ監督とディブルはプロレスの場外乱闘さながらの揉み合いを続けた。
翌日、2人はオーナーのマージ・ショット女史に直接謝罪(このショット女史も、ヒトラーを称賛する発言をはじめ数々の放言で知られた人物だった)。特に処罰は下されなかったが、ピネラ監督はその年限りで辞任した。
ディブルとピネラ監督の一件は、トラブルとはいってもどこか笑える要素がある。だが、レッドソックスの主砲として活躍し、ユニークなキャラクターでも人気を博したマニー・ラミレスが起こした事件は趣が違う。
08年6月にクラブハウス職員に関係者用チケットの手配を頼んでいたラミレスだが、手に入らないと伝えられて激怒。チームの古株で、当時64歳になっていた職員を突き飛ばした。
ラミレスはすぐに謝罪し、球団からも特に処分は下されなかった。ただ、気まぐれだがどこか憎めないキャラクターだったラミレスの"ダークサイド"に多くのファンがショックを受けた。騒動の1か月後、ラミレスはロサンゼルス・ドジャースへトレードされるのだが、この一件が遠因になったと言われている。
もし、中田の事件がMLBで起きていたらどうなっただろうか。良し悪しは別として、そこまで大きな問題にはなっていなかっただろう。スポーツに限らず、アメリカ社会では「争いごとは起きるもの」という認識があるからだ。「監督>選手」「先輩>後輩」という力関係が基本的にないため、トラブルが起きても個人同士の問題として処理される。
ただ、中田のケースは、「後輩が先輩に服従する」という関係性が作用している面が少なからずあり、そこにアメリカにはない陰湿さが見え隠れしている。どこか後味の悪さが残るのも、そのせいではないだろうか。
構成●THE DIGEST編集部
ある試合でディブルを起用しなかった理由を報道陣に聞かれたピネラ監督は、「肩が痛いと言っていたから」と回答。その直後、ディブルが「そんなことは言っていない」と反論。面子を潰された指揮官は激怒し、報道陣の面前でディブルに襲いかかったのである。周りにいた選手たちに引き離されるまで、ピネラ監督とディブルはプロレスの場外乱闘さながらの揉み合いを続けた。
翌日、2人はオーナーのマージ・ショット女史に直接謝罪(このショット女史も、ヒトラーを称賛する発言をはじめ数々の放言で知られた人物だった)。特に処罰は下されなかったが、ピネラ監督はその年限りで辞任した。
ディブルとピネラ監督の一件は、トラブルとはいってもどこか笑える要素がある。だが、レッドソックスの主砲として活躍し、ユニークなキャラクターでも人気を博したマニー・ラミレスが起こした事件は趣が違う。
08年6月にクラブハウス職員に関係者用チケットの手配を頼んでいたラミレスだが、手に入らないと伝えられて激怒。チームの古株で、当時64歳になっていた職員を突き飛ばした。
ラミレスはすぐに謝罪し、球団からも特に処分は下されなかった。ただ、気まぐれだがどこか憎めないキャラクターだったラミレスの"ダークサイド"に多くのファンがショックを受けた。騒動の1か月後、ラミレスはロサンゼルス・ドジャースへトレードされるのだが、この一件が遠因になったと言われている。
もし、中田の事件がMLBで起きていたらどうなっただろうか。良し悪しは別として、そこまで大きな問題にはなっていなかっただろう。スポーツに限らず、アメリカ社会では「争いごとは起きるもの」という認識があるからだ。「監督>選手」「先輩>後輩」という力関係が基本的にないため、トラブルが起きても個人同士の問題として処理される。
ただ、中田のケースは、「後輩が先輩に服従する」という関係性が作用している面が少なからずあり、そこにアメリカにはない陰湿さが見え隠れしている。どこか後味の悪さが残るのも、そのせいではないだろうか。
構成●THE DIGEST編集部