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プロ野球

問題視されるべきなのか? “エンターテイナー”新庄剛志監督の「ファンが選ぶスタメン試合」構想はMLBでも実例があった!

出野哲也

2021.11.08

 この”怪挙”を実現したのは、セントルイス・ブラウンズ(ボルティモア・オリオールズの前身)の名物オーナーだったビル・ベックだ。「プロ野球はエンターテインメントでなければならない」との信条は新庄監督と同じで、数々の独創的なプロモーションで名を馳せたアイディアマンは、1951年8月15日、地元紙に広告を出して「グランドスタンド・マネージャーズ・ナイト(観客席が監督になる夕べ)」への参加を呼び掛けた。新庄と同じように、スタメンを誰にすべきかも意見を募ったが、しっかり先発投手だけは対象外にしていた。

 試合当日、同月24日のフィラデルフィア(現オークランド)・アスレティックス戦では、選ばれた2人のファンがユニフォームを着て最前列に陣取った。彼らは「投手を交代させますか?」など、作戦内容を記した看板を客席に向かって表示し、観衆はあらかじめ配布された「YES」「NO」と書かれたカードを提げる。その枚数によって作戦は決定され、ブラウンズは見事に5-3で勝利を収めたのだった。
 
 ところで新庄は、昨年「野手の監督は誰々、メンタルの監督は誰々……とチームに4人監督がいても良くない?」と「監督4人制」を提唱していたが、実はこれもメジャーに実例がある。61~62年の2年間、シカゴ・カブスが正式な監督を置かず、複数のコーチが交代で指揮を執る“ヘッドコーチ制”を採用していたのだ。

 ただ、オーナーの思いつきで始めたこのシステムは機能することなく、カブスは低迷から脱却できず。63年以降は指揮官が一人に絞られ、66年に名称もヘッドコーチから“監督”に戻った。

 このように、一見するとぶっ飛んだ考えに思えても意外に先例はあるものだ。果たして新庄監督は、これまで誰一人思いつかなかった新機軸を編み出すだろうか。それが実現した日には、日本球界にまた新たな風が吹きそうだ。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
 

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