専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

“一芸枠”として期待されたドラ5が虎の支えに。青柳晃洋が無双を続ける理由「他球団のエースに負けたくない」

チャリコ遠藤

2022.06.28

昨季にキャリアハイの13勝を挙げた青柳。その活躍はさらなる飛躍への自信となった。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

昨季にキャリアハイの13勝を挙げた青柳。その活躍はさらなる飛躍への自信となった。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 19年に初の開幕ローテ入りを果たした青柳は、21年にキャリア最多の13勝をマーク。そして昨年までに3年連続で規定投球回にも到達した。常々「3年やって一人前と言われる世界」と口にしてきた右腕にとって、主戦投手として4年目を迎える今季は視線をさらに“上”へ向けた。

「先発投手なら一度はやってみたい」。シーズンオフから開幕投手への熱意を隠さなかった。長年エースに君臨してきたランディ・メッセンジャーがチームを去り、FA(フリーエージェント)で西勇輝が加入してからも「いつまでも西さんにおんぶにだっこではいけない」と宣言。矢野燿大監督もその意気込みを買い、迷わずに大役を託された。

 開幕投手の大役は直前の新型コロナウイルス感染で幻となってしまったが、約3週間の出遅れは青柳をさらに強くした。「一度、ポジションを失ったと思っている」と闘争心に自ら火をつけて1軍に復帰を果たすと、「テレビで見ていても(同僚が)野球してるのが面白くなさそうだった。元気がない。寂しいなと思った」と開幕から歴史的な出遅れで沈んでいたチーム、同僚を鼓舞するような快投の連続で“瀕死”の猛虎に活力を注入した。

 青柳本人は“無双”の要因に今春の「主力調整」を挙げる。

「今年はキャンプで自分のペースで調整ができた」
 
 これまでは他の若手とともに第1クールから実戦に投入され、ふるいにかけられる立場でキャンプ序盤からコンディションをピークに持って良く必要があった。だが、今年はローテ入りが早々に確定。2月から結果を追い求めず、個人の課題と向き合った。ブルペンではシンカーやカーブの精度向上に努め、オープン戦では得意のカットボール、ツーシームを封印する制限付きの投球をあえて敢行。投球の幅は広がり、自力もついた。

 ルーキー時代からバッテリーを組んできた梅野隆太郎は、青柳の進化と成長をミット越しに感じてきた。

「昨年も13勝しましたけど、今年はより意図したボールを操れている。今までは、ずっと苦労してきた左バッターに球種だけで勝負してましたけど、タイミングを変えたりね。今年は三振も取れるようになってる。例えば1死三塁で前に飛べば何かが起こる可能性もあるけど三振を取って事を起こさせない。

 制球力、技術が上がってるから余裕があって工夫もできてる。ただ技術がある、動くボールがあるだけじゃなくそれをしっかりと武器にできてる。だからロースコアでも勝ち切れてるし、7つ、8つも勝てているんだと思う」

 今季にこれだけの力を誇示してもなお青柳は、「まだエースとは呼ばないで欲しい」と謙そんする。ただ、「大野さんもそうですけど、他球団のエースと呼ばれる人たちと投げ合うのは楽しみですし、負けたくないというのはある」とその自覚も十分にある。

 視野に入る幾つかのタイトル、そして背負うべき大きな看板――。143試合をローテーションの中心として戦い抜いた後、いったい何を手にするのか。2022年は間違いなく青柳晃洋が“突き抜ける”1年になる。

取材・文●チャリコ遠藤

【関連記事】最下位脱出どころかCS争いに食い込む!? 阪神のさらなる上昇を示唆する「データ」とは?

【関連記事】2軍で送るもどかしい日々。阪神・藤浪晋太郎は“現状”に何を想うのか?「1軍に呼ばれるまで――」

【関連記事】同世代の大谷翔平は遠い存在に。どん底を味わった北條史也が、いま牙を研ぐ理由「無理やったら終わり」
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号