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プロ野球

【助っ人選手の履歴書:M・シューメーカー①】まさかのドラフト外から這い上がった苦労人右腕“下剋上”の軌跡<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.08.25

 マイナー時代は妻のダニエルがパラリーガル、シューメーカーもオフの間は代理教師として教壇に立ち、糊口をしのいだ。メジャーリーガーになるという夢を支えてくれた妻からも、「こういう生活があとどれだけ続くの?」と言われたことがあったという。

 シーズンが終わると、妻と将来について話し合うのがシューメーカー家の年中行事になった。だが、結論はいつも同じだった。

「ベースボールを心から愛していたから、とにかく続けたんだ」。シューメーカーは14年、アメリカメディアの取材にそう語っている。

 13年9月20日、シューメーカーは27歳の誕生日まであと7日というところで念願のメジャーデビューを果たした。この年は1試合だけの登板に終わったが、翌年大きく飛躍を遂げる。
 
 5月13日にメジャー初勝利を挙げると、7月以降だけで11勝。終わってみれば、規定投球回未満ながらリーグ4位の16勝を挙げて地区優勝の立役者となり、プレーオフでも6回1失点の好投を見せた。新人王投票では2位。ドラフトにかからず、契約金わずか1万ドルでプロ入りした男はついに大輪の花を咲かせた。

 無名右腕の意外な快進撃を支えたのはスプリッターだった。メジャーでは使い手が少ないこの球種を自在に操れたことが、成功の要因だったことは間違いない。シューメーカーはこのスプリッターを14歳の時から投げていたという。

「当時はチェンジアップの練習をしていたんだけど、どうもうまくいかなかった。そんな時に、父さんとトラベルチームのコーチに言われてファストボールの握りのまま指を広げてみた。そうしたらいい感じになって、指を広げれば広げるほどボールが変化するようになったんだ」

 20代も後半になってようやく手にした成功。メジャーリーガーの駐車場に似つかわしくなかったボロボロのフォード・トーラスを売って、新車も手に入れた。続く2年間も、14年ほどではないにしてもローテーションの一員としてエンジェルスのローテーションを支えた。

 だが16年9月、シューメーカーは新たな試練に見舞われた。
(②へ続く)

取材●SLUGGER編集部
 
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