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高校野球

【神宮大会】高校の部でなぜエラーが続発したのか。中京大中京の圧倒的強さと打撃偏重への警鐘

田尻賢誉

2019.11.24

 天理戦は2本塁打を浴びるなど本調子ではなかったが、8回裏1死二、三塁の場面で、天理は8対7と1点リードしているにもかかわらず、前進守備を敷いた。

「打てないですからね。同点にされたら勝てないと思わないといけないピッチャー。勝負を賭けないといけない時はある」(天理・中村良二監督)

 結果的に、前進守備が裏目に出てセカンドが逆転を許す2点タイムリーエラー。後ろに守っていれば、1失点はしても1つアウトを増やして同点で止められる当たりだった。相手が高橋であるがゆえに、守備位置が変わり、守る野手のプレッシャーも大きくなる。これもまた、中京大中京がエラーを誘える一因だ。

 この高橋に加え、東海大会で最速147キロを記録した左腕・松島元希、ベンチ外にも140キロを超える投手がいる層の厚さが中京大中京の強みだ。先述した攻撃力に加え、守備も相手の13失策に対して無失策と安定している。投手の高橋、松島はスピードはあるものの、まだまだ課題は多いが、逆にいえば今後の伸びしろは十分。

 秋にこれだけの力を見せるのだから、ひと冬越えてどんなチームになるのか。キャプテンの印出が「必ず春も夏も連覇して、歴史に残る代にしたい」と言ったが、準備やカバーリング・バックアップなど細かい部分をしっかりやれば、その言葉も現実味を帯びてくる。
 
 今大会は初戦敗退ながら、不気味さを感じさせたのが仙台育英。今年は須江航監督が公言する「日本一1000日計画」の2年目になる。予定よりも早く日本一を獲れるチャンスだったが、攻撃面では「フライアウトはOK。振っていけ」と細かい策は用いなかった。守備面でも、ともに1年生で140キロ後半を投げる左腕・笹倉世凪は登板させず、右腕・伊藤樹はベンチから外した。この秋は勝ちにいかず、「あくまでも日本一を獲るのは甲子園で」という戦い方だった。

「笹倉は春から国体まで1シーズン投げてきたので。1年生に頼ってるようじゃ、日本一は夢のまた夢。2年生にがんばってくれと言いました」(須江監督)

 笹倉に代わってエースナンバーをつけた左腕の向坂優太郎はゲームをつくる能力がある。この他に、伊藤、背番号11の菅原天斗ら145キロを投げる右投手が3人。須江監督は「彼らのスケールは伸ばしながら、試合がつくれるようにしたい」と育成に自信を見せる。“本気モード”で日本一を獲りにくるセンバツでは、まったく違う戦い方をするだろう。

 2試合で17得点を挙げた天理は、7番の河西陽路が中京大中京戦で神宮大会史上初となる1試合3本塁打、1年生の瀬千皓が2試合連続本塁打と力を見せた。近畿大会で履正社、大阪桐蔭を破った打力は本物だが、敗れた中京大中京戦は4本塁打を放つも6失策。脆さを露呈した。

「ホームラン4本でエラー6個。天理らしい負け方です(笑)。でも、らしい負け方はいけない。らしい勝ち方ができるようにしないと。冬は守備を鍛えます。鬼になってガンガンいきますよ」(中村監督)

 知田爽汰、内山壮真の3、4番、満塁本塁打の今井秀輔、先発で好投した荻原吟哉ら夏の甲子園準優勝メンバーが残り期待された星稜も、1イニング2暴投での失点やエラー、一塁走者の内山がアウトカウントを間違えて中飛で飛び出す併殺などで自滅。倉敷商もタイブレークの10回無死一、二塁で投手ゴロを二塁に悪送球したのをきっかけに6失点。国士舘は同点の7回裏、先頭打者のライトフライ落球から勝ち越し点を与えた。
 
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