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ジャッジの62号記念球は3億円?所有権をめぐって法廷闘争、コレクターが“球質交渉”を展開――MLB本塁打ボール狂騒曲<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.09.25

 事件の中心となったのは、2001年にバリー・ボンズ(当時ジャイアンツ)が放ったシーズン73号の記念ボールだ。スタンドに飛び込んだボールは奪い合いの中で、幾人かのファンの手を経由してから、一人のファンが持ち帰った。だが、後になって「自分が最初にキャッチした」と主張するファンが、「所有者」のファンを提訴したのだ。訴訟大国アメリカを象徴するようなこの事件は、『100万ドルのホームランボール』(原題:『Up For Grabs』)のタイトルでドキュメンタリー映画にもなった。

 おまけにアメリカには、“ホームランボール・コレクター”なる人物まで存在する。少なくないファンや記者から蛇蝎のごとく嫌われているザック・ハンプルだ。、本人いわく「これまでに12000個以上のホームランボールをキャッチしてきた」。その中には、マイク・トラウト(エンジェルス)のメジャー初本塁打や、アレックス・ロドリゲスの通算3000安打目となった本塁打のボールも含まれている。特に後者については、ひと騒動あったことで有名だ。

 15年6月19日、当時ヤンキースにいたロドリゲスが本拠地ヤンキー・スタジアムのライトスタンドへ叩き込んだこのボールを、テンプルは見事キャッチした。しかし試合後、テンプルは「このボールは返さない」と強硬に拒否。記念ボールが欲しいロドリゲスとヤンキースは、テンプルに対して返還交渉を行った。

 交渉の末、テンプルは数々の条件を引き出した後で、ようやく記念ボールを返却することに同意した。その条件とは、①ハンプルが支援する団体にヤンキースが15万ドル(約1850万円)を寄付する ②ロドリゲスのサイン入りユニフォーム、サイン入りバット(1本には「ナイスキャッチ」というメッセージが書かれていた)、ヤンキー・スタジアムのバックステージを見学できるVIPツアー、この年のオールスターのチケットをテンプルに提供する……などだ。まるで人質ならぬ”球質交渉”のようだが、これは本当にあった話である。
 
 同様にファンが返却しないことを表明している700号については、プーホルス本人は「記念ボールはファンのものだ」と気にしていない様子だが、MLBでは今季、もう一つ莫大な価値がつくとみられるメモリアル・アーチがある。言わずと知れたアーロン・ジャッジ(ヤンキース)のシーズン62号だ。

 9月21日にジャッジが放った60号は、キャッチしたヤンキースファンの大学生が1セントの見返りも求めず、即座に球団へ返却した。この時、SNSで「信じられない善行だ」「僕なら一晩中だって値段交渉するよ」と話題になった通り、ジャッジの62号ボールには、プーホルスの700号ボール以上の価値が付くと言われている。米メディア『Fox Business』の試算によると、プーホルスの700号は10万ドル(約1400万円)で、ジャッジの62号は約250万ドル(約3億6000万円)の価値があるという。

 やはり10万ドル(約1400万円)の値が付くと言われた60号は、ファンの善意によって速やかに戻ってきた。だが、その25倍の値が付く62号のホームランボールはどうなるのか。ジャッジの記録達成もさることながら、記念ボールをめぐる“狂騒曲”にも注目したい。

構成●SLUGGER編集部
 
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