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MLB

「それでメシ食ってるんだから、練習なんて当たり前でしょ」寛容に淡々と自分の流儀を貫いた福留孝介のメジャー生活<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.09.28

 だから、キャンプ中に「早出の特打ち」をやっても、室内ケージに居残って、特別コーチとして招かれた佐々木恭介氏とメジャーリーガーが驚くほどの練習量をこなしても、「打ち込んでいるなんて意識はない」と言うのみだった。

 それは打撃だけではなく、日々の体調管理も同じだった。 

 真夏のフィラデルフィアやカンザスシティで、福留が外野を走り込んでいる姿を何度も見た。自主トレーニングの時にはドラゴンズの二軍練習場=旧ナゴヤ球場の外野で黙々と走り込んでいたし、阪神移籍後も、真夏にもかかわらずあの広い甲子園球場の外野フェンスを行ったり来たりしていた。そんな時、彼はいつもこう言うのだった。

「特別なことなんて、何もしてないよ」と。

「俺、結構、一人で走るの好きだし、今みたいに周りに誰もいないと、気持ちも集中できるし、いろいろ考えていることが整理できる」
 コツコツと積み上げる、とはよく言うが、そうすることが好きな人だった。ドラゴンズの選手たちがキャンプに旅立った後、彼は一人で名古屋に残って、孤独な練習を続けた。キャッチボール代わりに、カゴに満載されたボールを一人でネットに向かって投げ続けたり、打撃投手が不在なので、いわゆる「置きティー」で汗が滴り落ちるまで打ち続けたり。

 だからこそ、の日米通算2450安打であり、数々のタイトル獲得なのだろうが、実はその「コツコツ」のお陰で、カブスでの3年間でも、彼の打撃成績は着実に上昇カーブを描いていた。あまりよく知られていないことだが、打率は1年目の.257から3年目は.263へ。長打率は1年目の.379から3年目は.439へと確固たる「足跡」を残している。OPS(出塁率+長打率)はリーグ平均を大きく上回る.809を記録している。

「もしも、あのままカブスに残っていれば……」などと言うつもりはないし、トレード先のインディアンス(現ガーディアンズ)や、ホワイトソックスで出場機会を限定されたため、打撃の調子を崩してしまったなどと主張するつもりもない。
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