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MLB

大谷翔平が言った「ヒリヒリする戦い」の向こう側にある特別な時間――ファンが「熱狂」を作り出すMLBのプレーオフ<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.10.19

 ハーパーは、「今、思い出しただけで鳥肌が立つんだ」と続けた。

「今夜の(地元の)観客は凄かった。正気じゃないぐらいだ。しびれたよ。今までに夢見たことすらないぐらいだ……また鳥肌が立ってきた」

 2人の活躍もあって9対1で圧勝したフィリーズは、昨年のメジャーリーグ王者にして今季フィリーズに14ゲーム差をつけた東地区王者ブレーブスを追い詰めた。地元局のニュース番組のアンカーはその夜、この勝利を興奮の面持ちで称えながら、こう伝えている。

「今年はイーグルス(地元のNFLチーム。その時点で5連勝中だった)も調子がいいし、この街のスポーツファンにとっては素晴らしい秋になっています」 

 本拠地を「Home」と呼ぶことからも分かるように、チームスポーツには選手個人と本拠地のある都市、あるいはそこに住み、「我が街のチーム」を応援する人々を結びつける「絆」が存在する。そして、その「絆」の源となる愛情や情熱は「優勝」をとても身近に感じることのできるプレーオフにおいてひときわ熱く、燃え滾る。
 シカゴやボストンで地元ファンの「熱狂」を経験してきたはずのカイル・シュワーバー外野手は、フィラデルフィアのファンを、こう表現する。

「今までプレーした街にそれがなかったという意味ではないが、今、この街にある熱狂は過去に経験したどれとも似ていない」

 試合開始から終了まで収まらない「熱狂」は、翌日もより「熱く」なって再現された。シリーズ第4戦の2回、1死一、三塁の好機に、日本では「大谷のエンジェルス時代のチームメイト」として知られるブランドン・マーシュ外野手が、先制の3ラン本塁打を右翼席に叩き込んで、その「瞬間」を再現したのだ。

 再び球場が揺れ、またしても大歓声で何も聞こえなくなった。

「このチームに来られて良かったよ。合流した初日から、今みたいな瞬間が訪れるのを選手だけではなく、お客さんたちが欲していると感じた」

 マーシュは試合後、シャンパンを浴びながらそう言った。

 その一撃で優位に立ったフィリーズは、続く4回にもJT. リアルミュートのランニング本塁打が飛び出すなど、いわゆる「神がかった」ことが起きて得点を重ね、8対3で昨年のワールドチャンピオンを倒してリーグ優勝決定戦進出を決めた。
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