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MLB

大谷翔平が言った「ヒリヒリする戦い」の向こう側にある特別な時間――ファンが「熱狂」を作り出すMLBのプレーオフ<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.10.19

 シリーズ4試合で打率5割、2本塁打5打点と打線の中心であり続けた主砲ハーパーは、大舞台で訪れる「瞬間」を作り、「神がかった」ことが起きる理由は、地元の観客が作り出す「熱狂」にあると言う。

「(優勝争いしていたナショナルズ時代の)15年から18年のこととか考えるんだけど、(当時の同僚)ジェイソン・ワースがよく、『勝ってる時のフィラデルフィアとは比べられない』と言っていたが、こういうことなんだろう」

 ワースはフィリーズが最後にワールドシリーズを制した08年の中心選手で、田口壮や井口資仁のチームメイトでもあった。

「1980年(ワールドシリーズ優勝)や93年(リーグ優勝)にプレーした球団OBも、この街がいかにして熱狂的になり、情熱を持ってチームの後ろ盾をしてくれているのかを話してくれる。昨日も今日も、僕はそれをこの目で見たわけだ」

 フィリーズはナ・リーグ東地区3位、つまり今年から出場枠が1リーグ5チームから6チームに増えたおかげで、プレーオフに出場できた「Underdog」、つまり、前評判の低いチームだった。戦前の予想では、「何とかプレーオフには進出できたが、終盤の闘いぶりからすると早期敗退するだろう」とみられていたが、下馬評をひっくり返してワイルドカード・シリーズで中地区王者カージナルス、地区シリーズで東地区王者ブレーブスを連破した。
 
 そんな彼らを優勝決定シリーズで迎え撃つのは、プレーオフで唯一の日本人選手、ダルビッシュ有が所属するパドレスだ。

 こちらも、ワイルドカード争いで14ゲーム差を付けられたメッツ、西地区の首位争いで22ゲーム差をつけられたドジャースと100勝チームを連破しての優勝決定シリーズ進出である。日本風に言えば、「下剋上」というやつだ。

 パドレスファンにフェアな言い方をすると、彼らの本拠地サンディエゴにも実は、フィラデルフィアのような「熱狂」はある。それはプレーオフという大舞台で、地元ファンが創り出す共同作業のようなもので、シリーズを勝ち抜くごとに増幅されていくのが常だ。

「金曜日(フィラデルフィアでの優勝決定シリーズ第3戦)、ここに帰ってきた時も球場が揺れるだろうし、凄いことになるのは分かっている」とハーパー。

「ヒリヒリ」を超越した「瞬間」。「神がかり」的なことが起こる予感。10月18日にサンディエゴで開幕した第1戦は、シュワーバーとハーパーの一発でフィリーズが2対0と先勝したが、パドレスの本拠地ペトコ・パークの盛り上がりは相当なものだった。

 このフィリーズとパドレスの「Underdog」対決は、今年のプレ―オフ最高の好勝負になるかもしれない――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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