若月は言う。
「ワイルドピッチが怖いからと言って(スプリットのサインを)出さないことの後悔をする方が嫌だった。全部俺が止めるから思い切って投げてこいと、気持ち的にはそんな感じでした。後ろに逸らしたら、それは僕が悪いんで」
宇田川がこのピンチと、さらに1イニングを抑えると、7回からは山﨑颯一郎が2イニングをピシャリ。最速159キロのストレートを連発して、ヤクルト打線に付け入る隙を与えなかった。9回はワゲスパックが先頭の丸山和郁に二塁打を浴びたものの、サンタナ、中村悠平の代打・宮本丈を連続三振。最後は第2戦で同点弾を浴びた代打の内山壮真をキャッチャーフライに抑えてゲームを締めた。
3試合連続で本塁打を浴び、ヤクルト打線のいいところばかりが出ていたシリーズ。その勢いを止められた。「このまま0勝で終わってしまうのか」「投手陣が通用しない」。そうした不安を払拭したことが大きい。
もともと力がある投手陣だった。強力ヤクルト打線を抑えることのできるピッチングスタッフだというのが戦前の予想だった。しかし、エース山本の不調で輝きを失っていた。それがようやく結果を出した。勢いにならないはずはない。
中嶋監督は言う。
「昨日の展開もそうでしたが、相手にホームランがずっと出ていました。やっぱり一発の怖さがかなりありますし、そこで何とかしなきゃいけないというところでバンバン点を取られて苦しかった。本当に今日はよく頑張った、1回の紅林の好プレーもあったし、あのプレーがなかったらもっと苦しい展開になっていました。今日は守備で勝ったと思います」
試合トータルで振り返れば決して内容が良いわけではない。
投手陣は見事だったが、攻撃陣は変わらず、決定打が出ない苦しみはある。ただ、3戦を戦って勝てなかったネガティブな空気は選手を硬くさせてしまっていたところはあるだろう。その中でなんとか1勝をもぎ取ったことはいろんな意味で前に進めただろう。
ヒーローインタビューで「明日、点を取って楽しみましょう」と場内を盛り上げた中嶋監督は、こう明日に期待を込めた。
「展開どうなるかわかんないすけど、明日は本拠地で最後の試合になるんでね、いい試合を見せたいです。勝ってタイにしたいです」
投手陣が強力・ヤクルト打線の勢いを止めた。連敗の悪い流れを払拭したと言えるが、本当の意味で流れを変えるのは次戦からだろう。次は打線の番。ヤクルト投手陣を真の意味で打ち崩すことができるか。
それができればシリーズの勢いは俄然、オリックスのものとなるだろう。
いずれにせよ、この日の勝利をより価値あるものにするには、これからの試合次第ということである。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
「ワイルドピッチが怖いからと言って(スプリットのサインを)出さないことの後悔をする方が嫌だった。全部俺が止めるから思い切って投げてこいと、気持ち的にはそんな感じでした。後ろに逸らしたら、それは僕が悪いんで」
宇田川がこのピンチと、さらに1イニングを抑えると、7回からは山﨑颯一郎が2イニングをピシャリ。最速159キロのストレートを連発して、ヤクルト打線に付け入る隙を与えなかった。9回はワゲスパックが先頭の丸山和郁に二塁打を浴びたものの、サンタナ、中村悠平の代打・宮本丈を連続三振。最後は第2戦で同点弾を浴びた代打の内山壮真をキャッチャーフライに抑えてゲームを締めた。
3試合連続で本塁打を浴び、ヤクルト打線のいいところばかりが出ていたシリーズ。その勢いを止められた。「このまま0勝で終わってしまうのか」「投手陣が通用しない」。そうした不安を払拭したことが大きい。
もともと力がある投手陣だった。強力ヤクルト打線を抑えることのできるピッチングスタッフだというのが戦前の予想だった。しかし、エース山本の不調で輝きを失っていた。それがようやく結果を出した。勢いにならないはずはない。
中嶋監督は言う。
「昨日の展開もそうでしたが、相手にホームランがずっと出ていました。やっぱり一発の怖さがかなりありますし、そこで何とかしなきゃいけないというところでバンバン点を取られて苦しかった。本当に今日はよく頑張った、1回の紅林の好プレーもあったし、あのプレーがなかったらもっと苦しい展開になっていました。今日は守備で勝ったと思います」
試合トータルで振り返れば決して内容が良いわけではない。
投手陣は見事だったが、攻撃陣は変わらず、決定打が出ない苦しみはある。ただ、3戦を戦って勝てなかったネガティブな空気は選手を硬くさせてしまっていたところはあるだろう。その中でなんとか1勝をもぎ取ったことはいろんな意味で前に進めただろう。
ヒーローインタビューで「明日、点を取って楽しみましょう」と場内を盛り上げた中嶋監督は、こう明日に期待を込めた。
「展開どうなるかわかんないすけど、明日は本拠地で最後の試合になるんでね、いい試合を見せたいです。勝ってタイにしたいです」
投手陣が強力・ヤクルト打線の勢いを止めた。連敗の悪い流れを払拭したと言えるが、本当の意味で流れを変えるのは次戦からだろう。次は打線の番。ヤクルト投手陣を真の意味で打ち崩すことができるか。
それができればシリーズの勢いは俄然、オリックスのものとなるだろう。
いずれにせよ、この日の勝利をより価値あるものにするには、これからの試合次第ということである。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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