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プロ野球

ゴールデン・グラブ賞投票の「前進」と「課題」。岡林ら若手の正当な評価は喜ばしい一方、非公開投票による“わだかまり”も<SLUGGER>

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2022.11.15

10年連続で君臨する菊池(右)だが、指標で見ると結果とはやや乖離も。福田は外野転向2年目で名手認定されるも、その評価には優勝の恩恵もあった? 写真:THE DIGEST

10年連続で君臨する菊池(右)だが、指標で見ると結果とはやや乖離も。福田は外野転向2年目で名手認定されるも、その評価には優勝の恩恵もあった? 写真:THE DIGEST

「UZRで賞を決める」というルールはもちろんない。当然、旧来型の指標(失策数や守備率など)を重視する投票者もいるだろう。その点、山田はどの部門でも菊池を上回り、UZRでも21年は7.2、今年も7.8で菊池より優秀だった(菊池はそれぞれ0.2、6.2)。後述する“優勝補正”がかかって初の戴冠も期待されていたが、名手の壁はあまりに高かったようだ。

 また、セ・リーグの三塁部門で岡本和真(巨人)が2年連続受賞したのも少々驚かされた。今季は増量の影響か攻守にあまりキレがなく、UZRではかなり守備範囲が狭かったことが明らかになっている。川相昌弘一軍総合コーチも「今年はあんまり良くなかった。受賞したことが不思議に思っている」と言っているほどで、UZRリーグ1位の村上宗隆(ヤクルト)を押しのけての受賞には疑義を呈する声も出そうだ。

●守備の評価に“優勝補正”が影響?

 球団別では、優勝チームのオリックスとヤクルトの3名が最多の選出となった。出場86試合の中村悠平(ヤクルト)の選出に異論もあるようだが、ゴールデン・グラブ賞の規定イニング数はクリアしており、守備率1.000は捕手史上5人目、リーグ1位の盗塁阻止率も記録したことを思えば十分に納得できる。

 それよりも「優勝補正」を感じさせたのが、パ・リーグ三塁部門と外野手部門だ。
 
 宗佑磨は2年連続でゴールデン・グラブを受賞。持ち味のダイナミックな守備で今季もハイライト集に残る好守を発揮したが、全体としては昨年よりも守備範囲が狭まった印象があり、実際にUZRのレンジ数値も大幅に下落している。加えてリーグワーストの11失策も記録し、UZRは昨年の11.9から-4.6まで悪化していた。

 一方、安田尚憲(ロッテ)は守備の成長が著しく、9月12日の日本ハム戦で三塁ベンチ前に飛んだフライをスライディングキャッチで好捕するなど、三塁手両リーグ1位のUZR7.1をマークした。守備率.977、失策数6はいずれも宗よりも優秀で、旧来型の指標でも上回ったが、得票結果は58票対189票と3倍差で敗れている。

 昨年も受賞していた宗が安田を上回ったのは理解できるところではあるが、福田周平の選出は少し首をかしげたくなった。福田はもともとセカンドを主戦場としており、外野本格転向2年目ながら無難にセンターをこなせていることは確かに見事だ。ただ、センターを500イニング以上守った計8選手の中でUZRは6位の-1.7と芳しくなかったのも事実で、どのあたりが評価されたのかは気になるところだ。

 優勝への“ご祝儀”的な意味合いがあるならば、同じオリックスの安達了一が少し不憫に感じてしまう。2013年から正遊撃手を務めていた安達は、ゴールデン・グラブ受賞経験こそないもののUZRでは毎年トップクラスの数字を残し、“隠れた名手”として評価する声が多かった。ただ、安達の全盛期にチームがBクラスに低迷することが多く、そのために正当な評価を得られなかったのだとすると、残念でならない。

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