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プロ野球

ゴールデン・グラブ賞投票の「前進」と「課題」。岡林ら若手の正当な評価は喜ばしい一方、非公開投票による“わだかまり”も<SLUGGER>

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2022.11.15

昨年ア・リーグMVPを満票で受賞した大谷翔平(エンジェルス)。MLBのアウォード投票はすべてが公開されており、その透明性は改めてうらやましい限り。(C)Getty Images

昨年ア・リーグMVPを満票で受賞した大谷翔平(エンジェルス)。MLBのアウォード投票はすべてが公開されており、その透明性は改めてうらやましい限り。(C)Getty Images

●“謎の1票”。その意味は……

 結果に影響は与えなかったとはいえ、今年も残念ながら「おふざけ」のような投票が散見された。特に気になったのが、セ・リーグ投手部門でのマクガフ(ヤクルト)、外野手部門でのポランコ(巨人)への1票である。

 改めてゴールデン・グラブ賞の定義を確認したい。ホームページにはこう明記されている。「卓越した守備によりチームに貢献し、プロの技術を発揮したプレーを基準として選出された『守備のベストナイン』を表彰するもの」。ちなみに投票資格は、新聞社、通信社、テレビ局、ラジオ局のプロ野球担当記者として5年以上にわたり現場での取材を主に担当している記者が得ることができる。

 では、先の2人は果たして「守備のベストナイン」にふさわしいプレーを見せていただろうか。マクガフは牽制悪送球をたびたび犯すなど、逆の意味で守備が注目される選手ではあるが、それは決してポジティブな意味ではない。ポランコも、打球判断のまずさや肩の弱さが目立ち、UZR-11.7は外野手両リーグワースト2位の低さだった。
 
 先にも言及したが、ゴールデン・グラブ賞は「最優秀UZR賞」ではない。担当者の「主観」で判断するのことが間違っているわけではもちろんない。しかし、心から彼らを「守備のベストナイン」として選んだのだとしたら、その理由は何だったのか知りたいと思うファンがほとんどだろう。

 投票者の基準に照らした判断があるのだろうが、それが何なのかをファンが知ることはできない。ゴールデン・グラブ賞然り、ベストナインやMVP然り、日本のアウォード投票は「非公開」のため、どの記者が誰に票を投じたのかは分からないからだ。近年は一部の記者がSNSなどで投票理由を述べているものの、メジャーリーグでは投票結果の発表と同時にその内訳が公開されていることを思えば、選考システムそのものではるかに遅れを取っていると言わざるを得ない。

 もちろん、メジャーのアウォード投票でも違和感を覚える投票はある。“世論”と異なる投票をした記者は批判にさらされることもあるが、その時に彼らはなぜ自分が「●●●より▲▲▲を評価したのか」について投稿や記事を寄稿し、選考理由を明らかにしている。それに納得するかはともかく、説明責任を果たすことで記者投票の価値を担保しているわけだ。

 今年のゴールデン・グラブ賞は、多くの若手が評価されたことに関しては間違いなくプラスだった。しかし同時に、改めて問題点もまた露呈した。その問題点は、「公開投票」によってかなり変わってくるはず。アウォード投票の真なる権威を保つ意味でも、システムにメスを入れる時期が来ているのではないだろうか。

文●新井裕貴(SLUGGER編集部)

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