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MLB

藤浪晋太郎のMLB移籍には「ロマン」がある。アメリカでの開花を予感させる理屈抜きの期待感<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.12.07

 彼自身、阪神球団を通じて「本格的にメジャー挑戦に向けた動きが始まる期待感と、一抹の不安があるのが今の正直な思いです」と言っているが、すべては「結果」次第だ。どのチームに移籍するのであれ、怪我なく来春のキャンプを過ごし、オープン戦から序盤の4月、5月までに楽観論を裏付ける成績を残し、「一抹の不安」を取り除かなければならない。

 今の彼(や彼の代理人)にとっても最も重要なのは、その「結果」を残すために、「契約内容ではなく、より多くのチャンスが与えられるチーム」を的確に判断することだろう。

 たとえばナ・リーグ西地区10連覇中のドジャースや、6年で5度もア・リーグ西地区に優勝し、その内2度もワールドシリーズに優勝しているアストロズのような「地区優勝より上」を目指しているようなチームは、先発ローテーションでもブルペンでも一角に食い込むのは簡単ではない。

 キャンプで「結果」を残して先発ローテに残っても、公式戦でそれを継続できなければ、すぐブルペンへ降格となってしまう。そして、救援でも「いい仕事をしている」という印象を残すことができなければ、今度は「マイナー降格」を打診される。近年は日本人選手の契約に「選手本人の合意なくして、マイナー降格は告げられない」という付加条項が契約に加わるケースが多いので、スコット・ボラス代理人もそのあたりは抜かりなくやるだろう。
 
 しかし、そうなったらそうなったで、今度は「飼い殺し」同然になって、「結果」を残すチャンスそのものが極端に少なくなってしまう事態を招く。

 古くは井川慶、最近では有原航平のような日本人投手の失敗例を見ても、MLBがNPBに比べてはるかに残酷で非情であることは明らかだ。彼らのように苦汁を飲まされる可能性は、大なり小なりどのチームに行ってもあるのだが、当然低い方がいい。

 そして、そういう事態になるのを避けるためには、以前、藤浪と同じポスティング制度でメジャー移籍を目指している吉田正尚外野手についてのコラムでも触れたように、やはり短期契約にこだわった方がいいのである。
【関連記事】吉田正尚はあえて単年契約を選ぶべき? ポスティングでMLB移籍をする日本人選手に伝えたい「成功への道」<SLUGGER>

 つまり、多少はバーゲンだと思えるような契約で最初に移籍したチームで「結果」を残し、MLBにおける自分の価値を高めてから、フリーエージェント(FA)となって高額契約を狙う、ということだ。

 以前より少ないとはいえ譲渡金が発生することを考えれば、単年契約は難しいだろうが、2年契約が望ましい。

 その間にMLBへ適応しながら、確固たる「結果」を残し、契約満了時にFAとなる。「やっぱり、藤浪はMLBに合ってたな」と思わせるような成績を引っ提げて、ドジャースやアストロズといった強豪チームと高額契約をした方が、20代後半から30代前半の貴重な時間を、無駄に費やすリスクが少なくなる。
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