杉山は来季、二軍ブルペン捕手として中日に復帰することが決まった。この３年間の経験をどう古巣へ還元していくのか。

「この３年間、いろんなピッチャーを見てきました。それも、良くない投手の方が明らかに多かったのですが、来年受ける投手たちが、その良くない投手に近づいてきた時に、すぐ指摘ができるかなと。やはり悪いところをずっと見てきている分、それを敏感に察知する能力が昔より明らかについている。あまり出しゃばってもいけないと思いますが、そこに気づけたら、こうなんじゃないかなっていう話はできたらと思っています」

　この３年間、独立リーグや社会人野球でプレーする中で、未完成の投手のボールを数多く受けてきたことによって、引き出しが増えたと杉山は感じているようだ。

「こうなったら、こうなってしまうよねというところ。悪くなるのにも過程があって、結果があるというところを、特にこの１年で勉強できたことはすごく大きかったので、そこは生かしていきたいと思います」
  　杉山を送り出す亀澤もまた、来季へ新たな思いを抱いていた。

「（杉山が）いないのはもちろん痛いですが、新しいコーチも入ってきて、新しい風が吹くと思うし、逆にワクワクしている。早く来年が来ないかなって思っています」

　この日、ベルーナドームで一つの区切りをつけた31人の元NPB戦士たち。セレモニー終了後には、家族やお世話になった知人とともにグラウンド上で記念写真を撮る姿が多かったが、そのどれもが笑顔に包まれていた。

　終わることで始まる物語もある。2023年、彼らの新たな物語が、より良きものになることを願い、再会を楽しみにしたいと思う。

取材・文●岩国誠

いわくにまこと。1973年３月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のＡＤとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。