昨年10月に帰国した際の記者会見で、大谷はWBC出場時の調整に関して、開催期間は「(通常なら)ライブBPで球数にしたら40球ぐらい投げている」時期であって、「先発で投げるのであれば60、70球ぐらいまで投げられるように仕上げないといけない。先発じゃなくていいと言うなら、そこまで早める必要もない」と語っていた。
この発言を聞く限りは彼自身に先発のこだわりがなく、クローザーとして投げる可能性も頭に入れているように思える。「先発で使うと言われていて」いきなり後ろで使うのではなく、最初からその予定であれば問題はないと考えているようだ。
だが、通常と異なる役割を任せるのはあまり好ましくない。これは大谷に限ったことではないが、彼自身はリリーフでの登板経験が数えるほどしかない。
日本ハム時代の2016年に、クライマックスシリーズ第5戦で指名打者として先発出場した大谷は、9回にマウンドに上がって165kmを連発した。この時のシーンを憶えている人も多いかもしれないが、セーブを記録したのはこれが唯一だ。通算でも公式戦でのリリーフ登板は、日本では通算85試合でわずかに3回(うち2回はプロ1年目)、メジャーに限っては63試合で一度もないのである。
クローザーとして登板した場合、先頭打者からいきなりフルスロットルで投げるわけだが、先発ならば、序盤は球速を抑え、様子を見ながら徐々に出力を上げていける。普段からそのペースで投げているのを思えば、故障などのリスクは少ないはずだ。
また、大谷はしばしば立ち上がりで制球に苦しむ傾向がある。昨年もイニング別で最も多くの四球を出し、最も多くの点を失ったのは初回だった。こうした傾向をふまえても彼がクローザーに向いているタイプとは言い難く、いつも締めくくりの場面で投げている専門の投手に任せるほうが賢明ではないか。
チームにとっても、高水準の投手には1イニングではなく3~4イニングを投げてもらえるほうが有難いに決まっている。準決勝や決勝でアメリカ、ドミニカ共和国の強力打線と対峙するのを想定しても、大谷とNPBの投手では相手に与える威圧感に大きな差がある。
だからこそ、大谷自身の調整に支障がない限りは、ぜひ先発で投げてほしい。もちろんケガのリスクを押してまでこだわるのは厳禁だが、「二番・投手」として打席にも立ってほしい。
無論、報道されている通りチームへの合流は3月上旬にずれ込むようであれば、事情は変わる。だが、打線に大谷がいるといないとでは、チームが有する迫力が桁違いであるのは言うまでもない。果たして栗山監督、そして大谷自身はどのような判断を下すだろうか。
取材・文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
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だが、通常と異なる役割を任せるのはあまり好ましくない。これは大谷に限ったことではないが、彼自身はリリーフでの登板経験が数えるほどしかない。
日本ハム時代の2016年に、クライマックスシリーズ第5戦で指名打者として先発出場した大谷は、9回にマウンドに上がって165kmを連発した。この時のシーンを憶えている人も多いかもしれないが、セーブを記録したのはこれが唯一だ。通算でも公式戦でのリリーフ登板は、日本では通算85試合でわずかに3回(うち2回はプロ1年目)、メジャーに限っては63試合で一度もないのである。
クローザーとして登板した場合、先頭打者からいきなりフルスロットルで投げるわけだが、先発ならば、序盤は球速を抑え、様子を見ながら徐々に出力を上げていける。普段からそのペースで投げているのを思えば、故障などのリスクは少ないはずだ。
また、大谷はしばしば立ち上がりで制球に苦しむ傾向がある。昨年もイニング別で最も多くの四球を出し、最も多くの点を失ったのは初回だった。こうした傾向をふまえても彼がクローザーに向いているタイプとは言い難く、いつも締めくくりの場面で投げている専門の投手に任せるほうが賢明ではないか。
チームにとっても、高水準の投手には1イニングではなく3~4イニングを投げてもらえるほうが有難いに決まっている。準決勝や決勝でアメリカ、ドミニカ共和国の強力打線と対峙するのを想定しても、大谷とNPBの投手では相手に与える威圧感に大きな差がある。
だからこそ、大谷自身の調整に支障がない限りは、ぜひ先発で投げてほしい。もちろんケガのリスクを押してまでこだわるのは厳禁だが、「二番・投手」として打席にも立ってほしい。
無論、報道されている通りチームへの合流は3月上旬にずれ込むようであれば、事情は変わる。だが、打線に大谷がいるといないとでは、チームが有する迫力が桁違いであるのは言うまでもない。果たして栗山監督、そして大谷自身はどのような判断を下すだろうか。
取材・文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
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