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プロ野球

【キャンプ展望:広島】「こうしろ、ああしろは好きじゃない」。信頼する4人のコーチとチームに新風を吹き込む新井新監督<SLUGGER>

前原淳

2023.01.25

 昨季まで敵として戦ってきた藤井ヘッドは、広島の可能性を感じている。「すごく嫌なチームだった。能力が高い野手が多い。トップ、優勝を目指していけると思う」。選手個々の眠っている力を引き出し、戦力の底上げを図っていく。そして、ペナントレースが始まれば、試合の一手先、二手先を読みながら新井監督をサポートしていくことが求められる。

 一軍バッテリーコーチには、新井監督と広島でともに戦ってきた弟分の石原慶幸が就任した。藤井ヘッド同様.新井監督から直接就任要請を受けたという

「『監督をすることになったから、(一緒に)やるよ』と言われました。なので、選択権はなかったですね」

 そう笑うが、心の準備はできていたように映る。現役時代に広島で計10年間ともにプレーし、最も近くで新井イズムを感じてきた。人材豊富な広島捕手陣の強化は、チーム力アップに直結する。今季から捕手に専念する坂倉将吾の独り立ちとともに、投手との共同作業による防御率、盗塁阻止率改善という使命を課せられた。

「打てて守れるキャッチャーは素晴らしいと思うけど、勝てるキャッチャーが目標。その試合、1年間通して、勝ちきれるキャッチャーをみんなに目標として頑張ってほしい」

 数字ばかりを追うのではなく、捕手としての成績を気にすることもしない。勝利のために何をすべきか。3連覇を支えた頭脳と技を注入し、再び勝てる扇の要を育成していく構えだ。
 さらに、新任の福地寿樹を二軍打撃兼走塁コーチに、新井監督の実弟・良太を二軍打撃コーチに配置した。

 福地コーチは94年に広島に入団して、広島野球を体で知っている。その後、西武、ヤクルトでもプレーし、盗塁王に2度輝いている。指導者としても2度、ヤクルトのリーグ優勝に貢献している。

 新井良コーチは中日、阪神でプレーし、阪神のコーチとしては大山悠輔を独り立ちさせるなど選手に寄り添う指導に定評があった。

 新任の両コーチも、新体制が始動した昨秋キャンプに参加し、新井流を共有してきた。二軍担当の両コーチの下にも、選手たちが率先して助言を求める姿があった。

「対話をした中で一緒になって上達していくものだから。『こうしろ、ああしろ』は好きじゃない。レギュラーだけでなく、若い選手にもそう。教えることより、気付かせることが大切だと思う」

 広島のキャンプといえば猛練習。厳しい練習で鍛え上げ、教え込み、叩き込む印象がある。昨秋はそこにプラスして、選手と首脳陣による対話が多く見られた。対選手だけでなく、首脳陣同士も対話しながら理解を深め合った。新井流は新任コーチを中心に浸透している。

 新たに招聘したコーチをすべて一軍に置かずに、高信二二軍監督ら広島を熟知した指導者の中に加えることで、二軍にも新しい風を吹かせることができる。若手の育成力は、FAなどで大型補強しない広島にとって重要な部門。福地コーチによる機動力浸透も、新井良コーチによる長距離砲育成も、今の広島に欠けているものだ。若手選手をより多く一軍に輩出するだけでなく、近い将来へ向けた若手の教育も期待される。

 新生広島への期待は高まる一方ではあるが、新井体制は地に足をつけてチーム作りを進めている。就任1年目から勝つことを求めながら、強い組織の基盤を固めていく。

文●前原淳

【著者プロフィール】
1980年7月20日・福岡県生まれ。現在は外部ライターとして日刊スポーツ・広島担当。0大学卒業後、編集プロダクションで4年間の下積みを経て、2007年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。華やかなプロ野球界の中にある、ひとりの人間としての心の動きを捉えるために日々奮闘中。取材すればするほど、深みを感じるアスリートの心技体――。その先にある答えを追い続ける。『Number』などにも寄稿。
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