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侍ジャパン

「ダルビッシュさんほど詳しい人はいない」――日本最強投手・山本由伸がメジャーのエースから学ぶ進化への糸口<SLUGGER>

氏原英明

2023.02.24

 ただ、データというものの有効性を考えると、本来はダルビッシュの姿勢こそがあるべき姿なのかもしれない。トラックマンを使えば、自身の感覚と、可視化されたデータのすり合わせが可能になる。後からデータを見て「自分のピッチングはこうなっている」と分析するのではなく、「今の球」を逐一確認することができる。また、そうあるべきなのだ。

 しかし、日本の球団の多くにその考えは浸透しておらずトラックマンを上手に利用できていない現状がある。

 この日のブルペンでの山本を見る限り、元から数値を確認しながら投げていくタイプの投手ではあることは見て取れた。だが、NPBの投手全員がそうしているわけではない。言い換えれば、今後いかに投手が進化していけるかは、ここから分かれていくという見方もできるだろう。
 
「僕は数値を気にする方なので、ピッチングの時にも確認しながら投げていますし、チームでも担当の方がいるので普段から話はしています。ただ、それぞれ大切にしていることは異なるので、侍ジャパンで(他の選手たちと)話をして参考になっているところはあります。(今回の合宿では)回転効率について、勉強になっています」

 いろんな部分でセンサーがはたらく山本らしい言葉だが、今の時代、“情報弱者”であるかどうかは、選手としての成長という部分で大きな違いを生むのは間違いない。特に今の侍ジャパンで言えば、人間としても、野球選手としても一手、二手先を行くダルビッシュという生きた教材から学ばない手はない。
 
「(ダルビッシュさんは)すごい野球のことを考えている人だなと話をしていて思います。本当に野球に対する注ぎ方が本当にすごく深い。あれだけ才能のある方であるのに、それでもここまでもめちゃくちゃ努力をされている。そして、さらに今でもこんなにやっている。

(パドレスと)6年契約を結ばれたのも、チームに信頼される人ってこういう人なんだと思いました。今日は投球が終わってからブルペンの後ろでも、回転効率のお話をさせてもらったんですけど、感覚と数値で合わせることが大切ということも仰られていたんで、いろいろ考えながらやれてます。(ダルビッシュさんといることで)良い時間を過ごさせてもらっています」

 国内最強投手が最新機器の活かし方を先駆者から学び、進化を遂げようとしている。明日から始まるソフトバンクとの侍ジャパン初実戦では、山本は2戦目に先発予定だ。どのような進化が見られるのか、今から楽しみだ。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
 

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