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侍ジャパン

大谷翔平が披露した“見たことのない配球” と“スライダーの多彩さ”。捕手・甲斐拓也の胸にも刻まれた「学びの時間」【WBC】

氏原英明

2023.03.10

 スライダーをインコースに投げ、それを植え付けるからなかなか的を絞れない。そこに160キロ近いストレートとツーシームも投げてくるわけである。

 時には、腕を下げてくる場面などもあり、打者の交わし方、幻惑の仕方は本格派右腕でありながら、打者は度肝を抜かれたに違いない。
 
 日本ではなかなか見たことないの攻め方だが、では、インコースにスライダーを投げないかというとそうではない。大谷のように多投することが少なく、さらに言えば、強弱を作ってくることがないだけで、これはひとつ学びだったとも言える。

 そもそも、日本人選手のメジャーリーグ挑戦はこうした野球文化の違いを吸収し、それを日本球界に落とし込むことが一番の財産だ。これまでは、日本人メジャーリーガーが挑戦を終えてから学びの時間をもらってきたが、今大会に現役メジャーリーガーが多く参加してくれたことで、その機会が恵まれたのだ。

 優勝を目指しながらの戦いの中に、ベースボールの文化を吸収し、日本野球が学び“を得ているというわけである。

 投手をリードしたというより導いてもらったと話す甲斐が実感を込めていう。

「本人の中でスピードの変化と(力を)入れるべきところは入れてというところがあったと思います。そこをコントロールできる翔平はすごいなと思いました。一発勝負の中で1試合であれば3打席または4打席が1人にはあると思うんですけど、そこの1、2打席目の投球というのが後に投げるピッチャーにも効いてくる。僕らキャッチャーとしてもそういった序盤からの配球を生かしていけるように心がけていかないといけないなというふうに思いました」

 大谷は序盤からインコースを徹底的に突いた。それも、日本の野球ではセオリーとされたストレートではなく、スライダーを投げ込んでいくことで、打者の混乱を誘った。強弱をつけ、変化をつけ、時には投げ方まで変えて、打者を牛耳っていった。

 打者を討ち取っていくための、今まで見たことのない配球――。4回1安打無失点の快投は“学び”の時間だった。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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