専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

「あまり無理しなくていいよ」平良海馬、粘投の影に2年目捕手の奮闘あり。強力SB打線を古賀悠斗はいかに封じたのか?【西武】

岩国誠

2023.04.19

正捕手争いを繰り広げている古賀(下)と柘植(上)。松井監督も二人を絶賛している。写真:岩国誠

正捕手争いを繰り広げている古賀(下)と柘植(上)。松井監督も二人を絶賛している。写真:岩国誠

 バッテリーによる勝因はもうひとつあった。2回から、スライダー主体のピッチングへと切り替えたのだ。

「平良ともイニング間で話をして、自分としてはスライダーがいいと思ったので、多めに使っていこうと」(古賀)

「スライダーが結構、(打者の)反応がいいかなと思ったので、結構投げました」(平良)

 バッテリー共に、この日の試合で手応えを感じるボールだったスライダー。先発初登板の4月2日(オリックス戦)では、115球中13球で全体の11.3%で、前回のロッテ戦では104球中19球で18.3%だったものが、今回は106球中35球で、全体の33.0%とその比率は跳ね上がっていた。

 スライダーを多投した理由。単にいいボールだったというだけでなく、古賀にはしたたかな計算があった。

「自分が打者だった場合、平良が投げるとなったら、やはり速い球に合わせるというのが普通の考え方だと思いました。相手には一流の打者がいっぱいいますが、オーソドックスな相手の考え方なら、速い球に合わせてくるだろうと思いました」

 実際にソフトバンクの打者には、甘いコースのスライダーに手が出ず見逃すケースもあった。平良のイメージを逆手にとった古賀のリード。試合前に平良自身が意識していた「フライを打たせないピッチング」とはならなかったが、結果的には6回1失点。3試合連続クオリティスタートを達成し、チームの勝利にも繋がっていった。

 捕手として、チームを勝利に導いただけでなく、打者としてはこの日、3回に犠打を決め、6回にはヒットを放った。課題の打撃でも結果を見せた古賀だが、捕手としての反省も忘れていない。

「自分の中では、8回の後逸が青山に無駄な失点を与えてしまった。自分があそこで止めていればという思いとかもいろいろあります。ただ、最近自分の中で試合にあまり勝てていなかったですし、失点も多かった中で、今日は打線の援護が大きかったのもありますけど、本当に勝てて良かったなと思います」
 
 2年目ながら捕手として奮闘する古賀を、松井監督はこう表現する。

「古賀も柘植もそうですが、本当にお互い切磋琢磨して、自分のいいところを引き出してきてくれていますからね。古賀にも思いっきりやってもらいたいと思いますし、キャッチャーとして堂々としてもらいたいと思います」

 正捕手・森友哉がFAでチームを離れていなければ、見ることができなかった景色を見ている古賀悠斗。柘植世那との正捕手争いの中で、リーグ屈指の投手陣の導き手として、どんな進化を遂げていくのか。

取材・文●岩国誠

【著者プロフィール】
岩国誠(いわくにまこと):1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。

【関連記事】変化球のサインに首を振り、ストレートを投げたワケ。先発転向の西武・平良海馬を支える「データ分析」と「本能」<SLUGGER>

【関連記事】WBC後に離脱した源田壮亮の穴を埋める貢献! “ドラ6ルーキー”児玉亮涼に注目すべき理由「チームが勝つために…」

【関連記事】「このままじゃ無理だな」源田壮亮が明かした“侍J強行出場”の舞台裏。背中を押した西武首脳陣の想いとは?【WBC】
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号