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プロ野球

“西武一筋”のベテラン栗山巧がチームにもたらす影響とは?「一発で仕留めるところは流石」と松井監督も舌を巻く

岩国誠

2023.07.27

 2018年までの10年間、西武は優勝から遠ざかっていた。その期間、優勝するために必要なことは何かを模索し、葛藤したこともあった。そうした経験を経たからこそ、どんな時でも泰然自若でいられるのかもしれない。

 1打席目のホームランはチームに勢いをつけたが、らしさを見せたのは、2本目のヒットだ。内野安打のランナーを一塁においた5回裏、外角低めに集められたボールを見極めながら、フルカウントまで持ち込むと、甘く入ったスライダーをセンターへ弾き返した。若かりし頃、当時打撃コーチだった田邊徳雄氏(現プロ担当スカウト兼企画室)と共に作り上げてきたセンターから逆方向へのバッティングだ。

「ああいうのが割と持ち味でもあるので。低くて強い打球、そういうものがもうちょっと増えてきたらいいと思います」

 通算安打はこの日の2本で2099安打。2097本で並んでいた古田敦也氏(元ヤクルト)を抜き、今度は鳥谷敬氏(元阪神・ロッテ)と並んで歴代34位タイとなった。そのことを告げると即座に「いやいや、もう、恐れ多いです。そこまでホントに、意識することはないですけど、はい」と恐縮しきりだった。

 調子が上向いてきたとはいえ、今シーズンはここまでベンチスタートになることが多かった。ここ最近は中継カメラのほど近くに陣取っている栗山だが、そこからどんなことを考えながら、試合をみているのか。

「気の利いた一言が言えるようにと。ちょっと和ませるようなことも含めて、ゲーム展開をしっかり読んだ一言が出せるようにっていうのと、4回、5回になってきたら、状況をみて代打の準備をしたり。点差が開いたら、ずっとベンチの時もありますが、その時にはもうしっかり声を出します」
 
 栗山が陣取る位置からは、ベンチの選手たち全員を見ることができる。若い選手が多い今のチームは栗山の目にどう写っているのか。

「苦しい時を乗り越えて、自分たちひとりひとりがやらなくちゃいけないこと、集中すべきところがだんだん見えてきたのかなって。なんでも一生懸命じゃなしに、なんとなくここをしっかりやるっていうのが、みんないいバランスでできているかなって思います」

 7月は連敗スタートだった西武も、この日ロッテに連勝したことで、気がつけば9勝8敗と勝ち越している。

「しっかり、頑張ります!」

 爽やかにそう言って、報道陣の前から退いた栗山。若獅子たちも台頭してきているが、その存在はチームにとって、なんとも頼もしい限りだ。

取材・文●岩国誠

【著者プロフィール】
いわくに・まこと/1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとWEBライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。

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