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プロ野球

54年ぶり12連敗の異常事態。ソフトバンクを悩ます投打の“2大問題”と藤本博史監督に託された使命とは?

喜瀬雅則

2023.07.28

藤本監督が育て上げた柳田。豪快なホームランで球場を沸かせる。写真:THE DIGEST

藤本監督が育て上げた柳田。豪快なホームランで球場を沸かせる。写真:THE DIGEST

「70点、80点の投手はいるんだよ」

 2月の宮崎キャンプ。藤本博史監督がふと漏らした“不安”は、今回の12連敗のような緊急事態に、千賀滉大や斉藤和巳のごとく、チームの危機という異様な空気の中であっても、己の持てる力をいつものように発揮し、一人でその負の流れを食い止められる『絶対的な存在』が見当たらないということでもある。

 開幕投手が、25歳の4年目左腕・大関友久だったことがその証左かもしれない。確かに、現状における相対的な力では、他の投手よりは“上”なのだろうが、何度も繰り返しになってしまうが、千賀の『力』には、当然ながらまだまだ及ばない。

 開幕2戦目の先発を担った藤井皓哉は、昨季のセットアッパーからの転向初年度で、3戦目の東浜も6月に33歳で、もう「ベテラン」と呼ばれる域に入っている。4戦目の石川柊太も31歳、5戦目の和田毅は42歳と、その“高齢化”も目立っている。

 今回の12連敗を止めた有原航平は、米メジャーからの出戻り組。オスナや近藤健介ら、他球団の主力級をごっそりと引き抜いた、総額80億円ともいわれた“異次元の大型補強”の中に名を連ねたビッグネームの一人だが、開幕は2軍スタート。やっとその期待にたがわぬエース級の働きを見せ始めたことは明るい兆しで、後半戦の戦いの中では、メジャー帰りの右腕に頼る場面が増えるだろう。

 こうした戦力入れ替わりの過渡期ゆえに、藤本が監督に就任したという背景を、この時期だからこそ強調したい。
 
 今季から、ソフトバンクは4軍制を敷いている。開幕時点で支配下、育成合わせて121選手の大所帯。つまり、1軍の監督一人で全選手の状態を把握することなど不可能だ。近年はコーチの担当職域も細分化され、例えばトレーニング部門にしても、強化とコンディショニング、リハビリなど、担当するスタッフも分かれている。

 そうした各部署での情報をフロントサイドが集約し、綿密に管理する。そうした情報は日々、1軍監督にも共有され、その内容に基づき、チームを動かし、選手の入れ替えなども判断する。

 かつての監督は、補強から新人の獲得交渉、コーチの招へいなどそれこそGM的な権限を持ち、チームのすべてを掌握していた。

 その“全権監督”の時代は、もうひと昔前のことだ。

 藤本は3軍制が発足した2010年からコーチとして現場に復帰すると、1、2軍では打撃コーチを務め、主砲・柳田悠岐をそれこそ二人三脚で育て上げ、2軍、3軍では監督も歴任している。

 つまり、育成手腕の確かさに加え、ソフトバンクホークスという組織を知り、選手たちの能力、現状も的確に把握している。千賀が抜け、内川聖一(現独立リーグ大分)、松田宣浩(現巨人)ら一時代を築いた野手の主力陣もチームを離れ、投打ともに戦力の入れ替え、若返りを図りながら、その一方で1軍の勝利も追求していく。「育成と勝利」というそのバランスを取っていく、難しい舵取りをしていかなければならない現状における“最適任者”として球団が判断したからこそ、藤本が1軍の長にいるのだ。
 
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