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プロ野球

54年ぶり12連敗の異常事態。ソフトバンクを悩ます投打の“2大問題”と藤本博史監督に託された使命とは?

喜瀬雅則

2023.07.28

育成から這い上がった甲斐。WBCにも出場し、侍ジャパンを3大会ぶり3度目の優勝に導いた。写真:THE DIGEST

育成から這い上がった甲斐。WBCにも出場し、侍ジャパンを3大会ぶり3度目の優勝に導いた。写真:THE DIGEST

 ただ、若手の現状を知る藤本だからこそ、その視線はシビアになってしまう。チャンスは、もちろん与える。しかし、結果が伴わなければ容赦なく2軍へ、あるいは3軍へ降格させる。

 巨大戦力ゆえに、そのチャンスはどうしても少なくなる。

 皮肉にも、現役ドラフトで阪神へ移籍した大竹耕太郎、日本ハムへFAの人的補償で移籍した田中正義が、新天地で結果を出し、いまや、それぞれのチームの屋台骨を背負う存在になったのも、そうした「見極めの機会」の“長短”が左右している。

 大竹の場合も、2021年に開幕ローテをつかみながら、登板はわずか2試合で、その年は未勝利。140キロ台のストレートと変化球の制球で打ち取っていく軟投派タイプは、パワーヒッターの多いパ・リーグでは通用しづらい、という“固定観念”も影響したのだろう。与えられたチャンスを生かし切れないまま、大竹の存在が埋もれてしまっていたのは確かだ。

 それが、阪神移籍後は、岡田彰布監督から「先発で使える」とオープン戦からローテに組み込まれ、ソフトバンク時代よりも“長めのチャンス”をもらったことが、心理的にも功を奏したのは間違いない。前半戦だけで7勝、球宴にも選出された。

 田中にしても、ソフトバンクで指摘されていたのは「メンタルの弱さ」の方だった。結果だけでなく、自らに内容の高さを求める完璧主義者のような一面があり、その厳しさと細やかさが、数少ないチャンスの中で、自らへの重圧に変わっていた面は否めない。
 
 ところが、日本ハムのように、そもそも戦力が足りないチームにおいて、ストッパーという地位に“はめ込まれる”ことで、むしろ安心して、その力を出せるようになったのだろう。こちらも前半戦だけで2勝14セーブをマークし、オールスターに初出場した。

 2人のように、ソフトバンクでの“数少ないチャンス”をモノにし切れなかった選手は現状、野手に目立っている。

 今季6年目のリチャードは、昨季のウエスタン・リーグでリーグ新記録の29本塁打を放つなど、打点と合わせて2冠。しかし1軍では23試合で3本塁打、打率も1割5分9厘と、レギュラーの座を掴み切れず、今季も7月26日時点で1軍出場は7試合のみにとどまっているが、2軍ではリーグトップの13本塁打を放っている。

 また、今季の開幕スタメンに入った2年目の正木智也も、15試合・30打席で1安打しか打てず、2軍調整が続いている。

 結果がすべて、数字を出すことこそが、この世界で生き残っていくための術でもある。その激しい競争の中で、育成から甲斐拓也が、牧原大成が、周東佑京が這い上がり、柳田悠岐にしても、大学は広島経済大と、全国的には決して知られた存在ではなかった中から、日本を代表する打者へと成長を遂げている。
 
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