「打球上がればいいなとは思ってましたけど、あまりいい状態ではなかったし、だから6月は全然ダメでしたし、結構、悩んでいる自分がいた。7月に入って、そういったところを切り替えて、悩むのは練習までと決めて、とにかく相手と勝負していこうという意識で試合に入り出したら、結果的にも良くなってきた。欲を言えば、もう少し打球を上げたいですけど」
キーワードは「打球を上げる」。「僕はホームランバッターではない」と言ったこともあるぐらいなので、彼の持ち味は大きな弧を描くようなフライを打つことではなく、広角にライナーを飛ばすことだろう。しかし、彼自身が「ある程度の長打も期待されている」と語る通り、「シングルヒット以上」の結果を求める気持ちは強く、強い打球でも結果が内野ゴロになったような試合後は、室内打撃練習場で打ち込むほど、自身の打撃に悩んでいた。
打球に角度をつけ、「芯を食えば長打」、「詰まっても内野手の頭を超えるヒットになる」。そんな打球を打つことを求めていた彼を、ロス監督も前半戦は寛容に見守る余裕があった。それは当時のカブスが、「再建モードの第2段階=頑張ればプレーオフを狙える球団」だったからだ。
明確な定義があるわけではないが、メジャーリーグの各球団は、①「再建モードの第1段階=有望株の獲得と育成を中心とした球団」 ②「再建モードの第2段階=頑張ればプレーオフを狙える球団」 ③「地区優勝、もしくはプレーオフ進出を狙う球団」 ④「プレーオフ進出は最低条件、ワールドシリーズ優勝を狙う球団」という風に分けられる。
カブスは、昨季は①だったが、昨オフにダンズビー・スワンソンやベリンジャーらをFAで補強し、②へのステップアップを図った。外野陣はレフトのイアン・ハップとセンターのベリンジャー、そしてライトの鈴木が「不動のレギュラー」だったが、ネルソン・ベラスケス(トレード・デッドラインで放出)やクリストファー・モレルといった選手がマイナーで活躍していた上に、昨年は韓国でプレーしたマイク・トークマンがいたため、ロス監督はその3人を外野で試しながら、ベリンジャーを一塁で起用する柔軟な起用法を取った。 ジェッド・ホイヤー編成総責任者も、8月1日のトレード期限までに「Buyer=買い手」なれるようなチーム成績を残していれば②から③へ。そうでなければ、「Seller=売り手」になって来季改めて巻き返すを図るプランだった。
前半戦終了時のカブスの成績は、42勝47敗で、地区首位のレッズと7ゲーム差の3位。当然、メディアは先発1番手のマーカス・ストローマンや、MVP獲得年を彷彿させるような打撃を取り戻していたベリンジャーを放出するのでは? と予想した。ところが、そこからカブスは今季最長の8連勝を含む4カード連続の勝ち越しを決め、ワイルドカード圏内に食い込んできた。
これを受け、カブスは「売り手」から「買い手」となり、ナショナルズから強打の三塁手ジェイマー・キャンデラリオらを補強することになった。そしてこの補強が、鈴木のその後の運命を変える重要なトレードになったのだ。
ロス監督は常々、ベリンジャーについて「信じられない身体能力を持つ彼を守備範囲の広いセンターに固定するのが理想」と話しており、本来は三塁手だが一塁も兼任できるキャンデラリオ補強は願ったり叶ったりだった。ベリンジャーをセンターに固定できれば、レフトにハップ、ライトに鈴木で外野の3ポジションは埋まるはずだったが、ここで問題になったのは、“不振”の鈴木と控えながら打撃好調のトークマンの処遇だった。
5月19日に昇格したトークマンは、長打力はないが、安定した出塁率が武器。打率は2割台前半から中盤を上下しながらも、出塁率は3割台半ばと安定していた。そういう選手がレギュラーの座をつかむ時、メジャーでは古くから「Right time and right place(正しいタイミングで正しい場所にいること)」が大事だと言われているが、彼の場合、まさにその通りになった。
キーワードは「打球を上げる」。「僕はホームランバッターではない」と言ったこともあるぐらいなので、彼の持ち味は大きな弧を描くようなフライを打つことではなく、広角にライナーを飛ばすことだろう。しかし、彼自身が「ある程度の長打も期待されている」と語る通り、「シングルヒット以上」の結果を求める気持ちは強く、強い打球でも結果が内野ゴロになったような試合後は、室内打撃練習場で打ち込むほど、自身の打撃に悩んでいた。
打球に角度をつけ、「芯を食えば長打」、「詰まっても内野手の頭を超えるヒットになる」。そんな打球を打つことを求めていた彼を、ロス監督も前半戦は寛容に見守る余裕があった。それは当時のカブスが、「再建モードの第2段階=頑張ればプレーオフを狙える球団」だったからだ。
明確な定義があるわけではないが、メジャーリーグの各球団は、①「再建モードの第1段階=有望株の獲得と育成を中心とした球団」 ②「再建モードの第2段階=頑張ればプレーオフを狙える球団」 ③「地区優勝、もしくはプレーオフ進出を狙う球団」 ④「プレーオフ進出は最低条件、ワールドシリーズ優勝を狙う球団」という風に分けられる。
カブスは、昨季は①だったが、昨オフにダンズビー・スワンソンやベリンジャーらをFAで補強し、②へのステップアップを図った。外野陣はレフトのイアン・ハップとセンターのベリンジャー、そしてライトの鈴木が「不動のレギュラー」だったが、ネルソン・ベラスケス(トレード・デッドラインで放出)やクリストファー・モレルといった選手がマイナーで活躍していた上に、昨年は韓国でプレーしたマイク・トークマンがいたため、ロス監督はその3人を外野で試しながら、ベリンジャーを一塁で起用する柔軟な起用法を取った。 ジェッド・ホイヤー編成総責任者も、8月1日のトレード期限までに「Buyer=買い手」なれるようなチーム成績を残していれば②から③へ。そうでなければ、「Seller=売り手」になって来季改めて巻き返すを図るプランだった。
前半戦終了時のカブスの成績は、42勝47敗で、地区首位のレッズと7ゲーム差の3位。当然、メディアは先発1番手のマーカス・ストローマンや、MVP獲得年を彷彿させるような打撃を取り戻していたベリンジャーを放出するのでは? と予想した。ところが、そこからカブスは今季最長の8連勝を含む4カード連続の勝ち越しを決め、ワイルドカード圏内に食い込んできた。
これを受け、カブスは「売り手」から「買い手」となり、ナショナルズから強打の三塁手ジェイマー・キャンデラリオらを補強することになった。そしてこの補強が、鈴木のその後の運命を変える重要なトレードになったのだ。
ロス監督は常々、ベリンジャーについて「信じられない身体能力を持つ彼を守備範囲の広いセンターに固定するのが理想」と話しており、本来は三塁手だが一塁も兼任できるキャンデラリオ補強は願ったり叶ったりだった。ベリンジャーをセンターに固定できれば、レフトにハップ、ライトに鈴木で外野の3ポジションは埋まるはずだったが、ここで問題になったのは、“不振”の鈴木と控えながら打撃好調のトークマンの処遇だった。
5月19日に昇格したトークマンは、長打力はないが、安定した出塁率が武器。打率は2割台前半から中盤を上下しながらも、出塁率は3割台半ばと安定していた。そういう選手がレギュラーの座をつかむ時、メジャーでは古くから「Right time and right place(正しいタイミングで正しい場所にいること)」が大事だと言われているが、彼の場合、まさにその通りになった。
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