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高校野球

プロ野球のような継投完封劇を可能にした、土浦日大・小菅監督の持つ“明確なビジョン”とマネジメント【氏原英明が見た甲子園:7日目】<SLUGGER>

氏原英明

2023.08.13

 また、エースの登板にも意図がある。

「相手は強いチームですので、今日のように9回は走者が出る展開になるだろうと思った。そういったプレッシャーを受け止めることはできるのはエースだろうと。そう思って、最後はエースに託しました」

 エースナンバーの藤本は走者こそ出したものの、後続をしっかり断ち、試合を締めてみせたのだった。

 見事な完封劇だが、この継投の成功の裏には、指揮官のもう一つの配慮がある。それはこの日の継投の順番を試合前からしっかり選手に伝えていたことだ。いわば、最高の準備をさせるために、役割を明確にしていたのだ。

 高校野球では、試合中は常にどの投手でもいけるように準備をさせておくというのがありがちだ。場当たり的に投手起用しても結果が出ることはあるが、調整する投手の方は難しい。

 小菅監督の場合、そういったことをしないように心がけている。

 もちろん、想定通りに行くとは限らない。イレギュラーなことも起きる。しかし、さまざまなケースを想定しているからこそあらかじめビジョンが描けるのだ。また、そのビジョンを選手に伝えることで準備を円滑にさせるという狙いもある。

 3投手の継投完封劇を、巧みにリードした捕手の塚原歩生真はいう。
 
「3人の継投があらかじめ決まっていると、やっぱり違います。投手陣の心の持ち様や球の質。それに、『いざ行くぞ』というパワーが全然違うの、(監督が)言ってくれるのは投手にとっては正解かなと思います」

 適材適所で、それぞれの選手が役割を果たしていく。

 プロ野球のような継投が、高校野球界にも降りてきたかのようだった。

 それは、指揮官のビジョンと投手陣への配慮がなせる業だった。


取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『SLUGGER』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
 

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