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高校野球

ジャイアントキリングならず。王者・広陵に敗れた立正大淞南の次の一歩に期待したい【氏原英明が見た甲子園:6日目】<SLUGGER>

氏原英明

2023.08.12

敗れたとはいえ、強豪・広陵を相手に善戦した立正大淞南。次につながる敗北だったと言える。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

敗れたとはいえ、強豪・広陵を相手に善戦した立正大淞南。次につながる敗北だったと言える。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 甘くなかった。

 甲子園でのジャイアントキリングを果たすには、少し遠かった。

 立正大淞南の指揮官・太田充は言う。

「それをさせないのが、甲子園で優勝するチームということじゃないですかね」

 この日の第2試合は、優勝候補の一角・広陵が大会初登場。同じ中国地区の立正大淞南と対戦した。試合は5回まで、立正大淞南の1点リードで折り返したが、後半に入ると趨勢が一転。広陵が6回に5点を奪って逆転勝ちを果たしたのである。終わってみれば8対3の完勝だった。

 ゲームの前半は主導権を握っていたにもかかわらず、あっさりひっくり返されてしまった。このことから太田監督は、まだ王者との距離を感じているようだった。
 
 悔いが残るのは6回裏、2死二、三塁の場面だった。広陵の逆転劇が始まる直前で、この時点では3対2で立正大淞南がリードしていた。

 3回途中から登板した立正大淞南のエース日野勇吹は、コーナーを丹念に突く粘り強いピッチングで、好ゲームを演出した立役者の一人だった。だからこそ、1点差とはいえこのピンチを切り抜けてくれるだろう。そんな期待もあった。
 
 この場面で日野は、広陵の9番・松下水音に対してアウトコースへ強めのストレートを投げ込んだ。だが、これを捕手の勝部友悠が後ろへ逸らしてしまい、同点に追いつかれてしまった。粘っていた中での致命的なミス。立正大淞南はこれで緊張の糸が切れてしまったかのように、その後、大量失点を喫してしまったのだ。

「勝つつもりでした。広陵の中井(哲之)監督やチーム自体を尊敬していますし、目指すべきチームの一つだと思っていますけど、やはり同じ高校生がやってることですから。大谷翔平(エンジェルス)選手じゃないですけど、憧れは捨てて勝とうと思っていました」

 太田監督がそう語るのは、この試合がそれだけ思惑通りに運んでいたからに他ならない。

 2回に8番・竹内昴航のライト前へのタイムリーヒットで1点を先制。3回裏にピンチを迎えたところで、先発の山下羅馬からエースの日野にスウィッチ。リードの試合展開を少しでも長く続けたいと考えていたから、早めに手を打った。

 4回には一度逆転されてしまったものの、その時は集中力を切らさなかった。5回表には3番・坂川尚仁と4番・山下の連続タイムリーで逆転。前半は完全に立正大淞南ペースだったのである。

 太田は言う。

「ゲームプランとしては、やはり離されずについていきたいと思ってました。先に点を取られてしまうと、相手は個々の力が高い選手がそろっていますので、伸び伸びプレーされてしまう。そうなるとすごい破壊力がある。必死についていくことによって、ちょっとでもプレッシャーをかけたいなと」
 
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