昨年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でアメリカとメジャーの雰囲気を体験したことにより、佐々木のメジャー志望が一層強まったことは十分想像がつく。とはいえ現時点では、山本と比べて投手としての完成度には差がありすぎる。山本は入団3年目から5年続けて規定投球回に達し、21年から3年連続MVP、チームもリーグ3連覇し22年は日本一になった。誰もが祝福できる形でメジャーへ旅立ったのだ。
対する佐々木は、マウンドに立ちさえすれば支配的なピッチングを見せるものの、22年に129.1回を投げたのが最多。昨年も左脇腹の肉離れなどで15試合に登板したのみだった。「恩返しもしないままアメリカに行くな」と言うのは暴論でも、大谷や山本のようにMVPに輝く活躍をして日本一、最低でもリーグ優勝に導いてくれるなら、25歳前に移籍したとしてもマリーンズ・ファンは納得できるはずだ。
そうした金銭的、感情的な側面を抜きにしても、佐々木にとって渡米する最適なタイミングは、やはりまだ先だと思われる。巷では「体が出来ていない今の状態でメジャーに行けば壊れる」との声をよく耳にするが、実際にはアメリカでは過保護と思えるくらい若い投手を大事に起用するので、その面では心配ないだろう。
しかし、メジャーでも結局最初の数年はフル稼働できないのであれば、日本にいるのと大して変わらず、早期に移籍するメリットはそれほどない。せいぜいアメリカでの生活に、早めに慣れることができるぐらいではないか。
それなら山本と同じように、ロッテで確固たる実績を残し、後顧の憂いを絶った上で、実力にふさわしい条件でメジャーへ行く。そのほうが誰にとっても幸福なのではないだろうか。早ければ今季終了後にも佐々木はポスティングを申し出るのでは、と囁かれている。それが本当にベストの選択なのか、よく考える必要があるだろう。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
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文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
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