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MLB

謙虚な意気込みの中に垣間見える決意と自信――過去2年の経験の上に新たな挑戦に臨む鈴木誠也<SLUGGER>

ナガオ勝司

2024.02.25

「(チームに)いてもらえるだけで気持ち的に違う。シーズン入れば、ベンチの中でたくさん話す機会はあると思うので、切磋琢磨して頑張っていきたいなと思ってます」

 鈴木はメジャー2年目の昨季、日本人打者では3人目、右打者としては初めてシーズン20本塁打以上を記録した。打率.262から.285、出塁率も.336から.357、長打率は.433から.485と軒並み1年目の打撃成績を上回った。

 OPSはMLB全体でも22番目、ナショナル・リーグ15番目の好成績である。これはどういうことかと言うと、とても贔屓目な言い方をすると、「本塁打王獲得歴のあるカイル・シュワバー(フィリーズ)やピート・アロンゾ(メッツ)、あるいはポール・ゴールドシュミット(カーディナルス)やクリスチャン・イェリッチ(ブルワーズ)より上だった」ということになる。

 その裏付けとなる数値もある。

 例えば打球の飛び出し速度。鈴木はこの2年で時速89.6マイルから91.4マイルに上昇。打球初速95マイル以上の「ハードヒット」を打った割合も41.3%から48.0%へ向上している。誤解を恐れずに言えば、「強い打球を放って安打や長打になる確率が上がった」ということになる。ただし、彼自身はその「強い打球」について、きっぱりとこう言っている。

「強い打球を打ったからといって、ヒットにならなかったら意味ないでしょ?」

 強い打球を打つことが、野手が追いつかず、野手の間を抜ける打球を放つ一つの方法であるのは間違いない。強い打球なら、たとえそれが当たり損ねとなっても内野手の頭を超え、外野手の間に落ちる可能性が高まる、と解釈すれば分かり易いが、強い打球が野手の正面を突いた時、鈴木は何度となく、同じコメントを残してきたものだ。

「正面に飛ぶには、何かしらの理由がある」
 単なる運では片付けず、結果を踏まえて、直向きに自分の打撃に向き合うこと。自分の世界に没頭し、感覚を鋭利に研ぎ澄まし、自己の意識と体の動きを確認し続ける。その単調な作業繰り返してきた彼にとって、キャンプでも何かが飛躍的に良くなることはないだろうし、今まで通り、いわば「日進月歩」で開幕に向かっていくのみだ。

 今年のキャンプでは、頼もしい援軍もいる。DeNAやソフトバンクで活躍した内川聖一氏だ。一部報道のようにカブスに雇用されたわけではなく、鈴木が個人的に依頼してキャンプに参加している。

 1982年生まれの内川氏と、1994年生まれの鈴木の距離が縮まったのは、内川氏がホークス、鈴木がカープで一軍定着を狙っていた2016年まで遡る。内川氏は言う。

「当時、横浜にいた頃、石井琢朗さんに凄いお世話になっていて、石井さんがカープに移籍して、同じ右打者ってこともありましたし、『誠也と一緒に自主トレやってくれないか?』と。それがきっかけでしたね。“神ってる”の年です」

 内川氏と言えば、ベイスターズ時代の08年に右打者としてはNPB史上最高の打率.378を記録し、ホークスに移籍した11年には、史上2人目となる両リーグ首位打者となった日本球界屈指の右打者である。日本版ウィキペディアなどには、「日本球界を代表するアベレージヒッター」と記されているが、内川氏の自主トレに参加した鈴木は、こう問うている。

「内川さん、こんなに打球が飛ぶんですね」

 当時の様子を、内川氏は懐かしそうにこう語る。

「当時の彼には、僕がコンタクトしながらヒットを打っていくっていうイメージがあったと思うんですが、一緒に練習をした初日、バットを振ってちゃんと打てば、こんなに打球が飛ぶんだなっていうのを感じたと思うんです」
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