鈴木にとってはプロ4年目のこと。その年、彼は右足大腿部の筋挫傷で開幕に出遅れながらも、交流戦でのオリックスとの3連戦(マツダ)で、2試合連続サヨナラホームランというNPB史上10人目の記録を樹立した。
21歳(当時)での達成は史上最年少で、続く第3戦でも決勝本塁打を放ち、当時の緒方孝市監督の、「神がかっていますね。今時の言葉で言うなら『神(かみ)ってる』よな」というコメントはその年の新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれるほど広く世間に定着した。
鈴木と内川氏の交流はその後も続き、昨夏、鈴木がいわゆる「スタメン落ち」したニューヨーク遠征の際には、ちょうど内川氏もホークス時代の後輩でもある千賀滉大(メッツ)投手をニューヨークに尋ねていた。当時の鈴木は伸び悩む成績に試行錯誤を繰り返している最中で、後半戦に復調した理由の一つは、内川氏のアドバイスだったと言われている。
当の鈴木がこう語っている。
「内川さんはシーズン中も結構、連絡を取って、バッティングのアドバイスとかをいただいてたんで、一回近くで、シーズン入る前にしっかり見てもらって、いい方向に進んでいければなという風な思いでお願いした。何となくは自分でも分かっているんですけど、シーズンにしっかりとした形で入っていきたいし、どういう動きをしたいのかっていうのを第三者からの目線でアドバイスしてもらうのは必要だと思う」
昨季、内川氏の再会から調子を取り戻した鈴木だったが、内川氏自身は、「日本の打ち方に戻したとか、そんなに簡単なものじゃないんです」と言う。
「日本でやって来た打撃に戻したわけではないし、メジャーだけの部分でやったわけでもない。その辺りの表現は難しいんですが、日本でやって来たことをアドバイスしましたって言っちゃうと、日本に戻せってことになるので、それは違います。そこの表現は一番、難しい」 鈴木は我々メディアに対し、自らの打撃について語ることを自重している。それは彼の感覚で話したことを、我々が制限文字数内で書き連ねることで、それを読んだ日本のアマチュア選手が誤解したり、メディアというバイアスを経たせいで誤解を招くことを避けるためだ。
内川氏が、「そこの表現は一番、難しい」と言うのも、それをお互いの共通認識としているからだ。それはあたかも大谷翔平が、「どうしてこんなに打てるのか?」を語らないことと似ていて、メディアも評論家も誰一人として、完璧には説明できないのと同じように思える。
現時点で言えるのは、昨季途中で調子を上げた鈴木の打撃は、彼が今年、シーズンを通じて活躍できたら、去年よりもう少しその輪郭がハッキリとしてくるのではないかということだ。
去年の成績は、MLB1年目の22年の成績があってこそ。今年の成績は、MLB2年目の昨年の成績があってこそ、である。
鈴木は言う。
「途中で調子が悪かったり、良かったりっていう波が2シーズン続いているので、そこはしっかり波を少なくして、1年間しっかり戦えるように、今からしっかり体作りをしていきたいなと思ってます」
謙虚な意気込みの中に、断固たる決意と、自信が垣間見える――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
【動画】メジャー2年目で確かな成長!鈴木誠也の2023年シーズンハイライト
21歳(当時)での達成は史上最年少で、続く第3戦でも決勝本塁打を放ち、当時の緒方孝市監督の、「神がかっていますね。今時の言葉で言うなら『神(かみ)ってる』よな」というコメントはその年の新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれるほど広く世間に定着した。
鈴木と内川氏の交流はその後も続き、昨夏、鈴木がいわゆる「スタメン落ち」したニューヨーク遠征の際には、ちょうど内川氏もホークス時代の後輩でもある千賀滉大(メッツ)投手をニューヨークに尋ねていた。当時の鈴木は伸び悩む成績に試行錯誤を繰り返している最中で、後半戦に復調した理由の一つは、内川氏のアドバイスだったと言われている。
当の鈴木がこう語っている。
「内川さんはシーズン中も結構、連絡を取って、バッティングのアドバイスとかをいただいてたんで、一回近くで、シーズン入る前にしっかり見てもらって、いい方向に進んでいければなという風な思いでお願いした。何となくは自分でも分かっているんですけど、シーズンにしっかりとした形で入っていきたいし、どういう動きをしたいのかっていうのを第三者からの目線でアドバイスしてもらうのは必要だと思う」
昨季、内川氏の再会から調子を取り戻した鈴木だったが、内川氏自身は、「日本の打ち方に戻したとか、そんなに簡単なものじゃないんです」と言う。
「日本でやって来た打撃に戻したわけではないし、メジャーだけの部分でやったわけでもない。その辺りの表現は難しいんですが、日本でやって来たことをアドバイスしましたって言っちゃうと、日本に戻せってことになるので、それは違います。そこの表現は一番、難しい」 鈴木は我々メディアに対し、自らの打撃について語ることを自重している。それは彼の感覚で話したことを、我々が制限文字数内で書き連ねることで、それを読んだ日本のアマチュア選手が誤解したり、メディアというバイアスを経たせいで誤解を招くことを避けるためだ。
内川氏が、「そこの表現は一番、難しい」と言うのも、それをお互いの共通認識としているからだ。それはあたかも大谷翔平が、「どうしてこんなに打てるのか?」を語らないことと似ていて、メディアも評論家も誰一人として、完璧には説明できないのと同じように思える。
現時点で言えるのは、昨季途中で調子を上げた鈴木の打撃は、彼が今年、シーズンを通じて活躍できたら、去年よりもう少しその輪郭がハッキリとしてくるのではないかということだ。
去年の成績は、MLB1年目の22年の成績があってこそ。今年の成績は、MLB2年目の昨年の成績があってこそ、である。
鈴木は言う。
「途中で調子が悪かったり、良かったりっていう波が2シーズン続いているので、そこはしっかり波を少なくして、1年間しっかり戦えるように、今からしっかり体作りをしていきたいなと思ってます」
謙虚な意気込みの中に、断固たる決意と、自信が垣間見える――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、
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