ところが、公式戦も残り5試合となった9月24日のメッツ戦。期待の新人、先発ジョナ・トンと対戦した鈴木は、体調を崩す前後から出始めていた「引っ張った強い打球」を第一打席から放った(結果は三ゴロ)。そして、迎えた第2打席、3回無死一、三塁のチャンスで、彼は再び「引っ張った強い打球」で三塁線を破り、タイムリー二塁打とした。
後は打球さえ上がれば、前半戦のような結果が残るのではないか?――誰もがそう思った。
4試合連続の本塁打が始まったのは、その翌日からである。
「ここ最近は吹っ切れて、もうどうでもいいやって感じで思い切って、どんどんスウィングしていこうという気持ちだった。(それまでも)一日一本は(安打が)出ていたんで良かったし、打点もちょっとずつ稼げてたんで、良かったのは良かったですけど、前半戦とのギャップが激しい。自分の中では納得してない部分はたくさんあるんですけど、そこを見ても仕方ない。とりあえず一試合一試合、自分に出せるものを出していきたい」
公式戦最後の試合で、カーディナルスに3連勝して締めた直後、鈴木は今季を暫定的に振り返り「ゴミのシーズンですね」と笑った。 「悪い時期が長かった。(打撃に)スランプってのはあるものだし、調子の善し悪しもあるものだけど、そこの波をもう少し小さくできたら、満足の行くシーズンだったかもしれない。でも、初めての経験もたくさんあって、すごく勉強になった。悪い時期にたくさん考えて、もがいた結果が最後にこうやって良くなったんで、そこはまた自信になりましたし、たくさんのことを感じたシーズンだった」
我々、メディアが称賛する「ゴジラ超え」にはまったく興味を示さず、「本塁打と打点は良かったですけど、その他はあんまり納得いってないかなって感じ」と躊躇なく言う。
「欲を言えば、もう少し率の方は上げたかったですし、そこが上がりきらなかったのは来年の課題。たくさん良いところもあるので、そこを伸ばしつつ、反省しなきゃいけないところはして、また次のシーズンに生かせればいいかなと思いますけど、まだポストシーズンがあるので、そのことよりは今、次のシリーズをしっかりやれるようにしたい」。
そう。まだ、終わったわけじゃない。
パドレスを迎え入れての、2戦先勝のワイルドカード・シリーズ。
永遠に続くかのように思えた長い、長いトンネルを抜けて、見つけた一筋の光。それをさらに眩く、強い光に変えて、9月30日からの決戦に注ぎ込め――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、
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