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プロ野球

「反逆者」と呼ばれた男たちが切り拓く日本球界の未来【2】「夢を批判する権利は誰にもない」。吉川峻平が選んだ己の道

氏原英明

2020.05.23

「ピッチャーが投げたボールがミットに収まる音やバットの音、選手の声が聞こえてくる。そういうのを見ているだけでワクワクしました。大学4年の夏に日米野球選手権に出て、ドラフトで上位指名されるような選手たちを間近で見る機会をもらいました。その時に、日本のドラフト候補の選手たちと一緒にやるのもいいけど、アメリカ代表の選手といつか対戦したいと思ったんです」

 もっとも、すぐさまメジャー挑戦をイメージしたわけではない。大学卒業後にパナソニックに入社し、ひとまずは日本のプロ野球を目指したが、ダイヤモンドバックスが獲得に興味を示していると耳にした。

 2つの選択肢の間で大きく揺れた吉川は、それぞれの道を書き出してみた。日本のプロへ入団した際のメジャーへの夢の描き方と、直接アメリカに渡るケースを、だ。

「自分で考えるベストの形になるとして、メリットとデメリットを1年ごとに書き出してみたんです。NPBに行ったとして、1年目は二軍に行ったりもするだろうなぁとか。でも、どれだけ日本でうまく行ったケースを想定しても、メジャーに行ける頃には30歳を超えてしまう。そこで欲が出たんです。20代のうちに挑戦できるチャンスは限られた人しかいない。そう考えて気持ちがアメリカに傾きました」
 もちろん、その背景には成功者の姿もある。年齢の違いはあるものの、社会人から日本のプロを経ずに直接メジャーへ挑戦してワールドチャンピオンにもなった田澤純一だ。吉川は大学に入った分、遅れはあるが、田澤をイメージすることで自分もその後に続けるのでないかと思った。

「アマチュアから直接アメリカに行くのは、社会人経由が理想なのかなと感じています。中学を卒業してすぐロイヤルズと契約した選手がいますけど、高校生までだといろんな意味で社会を知らない。その中で、言葉の違う国に来るのは簡単なことではない。社会人なら、そこでレベルの高い野球を学べるし、英語の勉強もできますから」。

 1年とはいえ、実際にアメリカのマイナーを体験した吉川の考えだ。天理の投手の件に関しても、重視されるべきはこうした視点なのではないか。

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