福山が駒大に入学した時、同期には投手が10人いた。前年の主力が卒業し、投手陣のコマが足りなくなることを見越して、重点的に補強したからだ。
東都リーグの名門だけに、いずれも実績があり、地元では名前を知られた逸材だったはずだ。そんな投手たちのなかで、甲子園出場の実績はあるが、身長176センチとさほど大柄ではなく、150キロのストレートを投げるわけでもない。決して目立った存在ではなかったはずの福山は、いかにして見いだされたのか。
福山は「監督との出会いが大きかった」と言う。「監督」とは、駒大を率いる大倉孝一監督のことだ。
「スピードで勝負するのは難しいぞ」
入学早々に言われた言葉だ。
同期の10人だけでなく、上級生の投手もいる。ブルペンに入れば、誰もが力のあるボールを投げている。福山も、そういうボールを投げなければ通用しないと思っていた。
「そのボールを投げることが悪いということではなく、打者を抑えることを考えた時、それだけでは無理だ」
大倉監督はそう言った。
「速い球だけ投げたがってどうするの? そんな野球は甘っちょろい。レベルが低すぎる。今あるボールをどう使ったら0点に抑えられるのか。それを捕手と一緒になって考えて、内野手と連携して、そうやって野球というのは成立していくんだ」
ミーティングでは、そんな話をよく聞かされた。
それは大倉の、監督としての極めて現実的な感覚でもある。高校時代からプロに注目されて、鳴り物入りで入学してくる投手もいる。たしかに速い球を投げ、見栄えも良いが、そういった投手が必ずしも活躍し、期待通りにプロに行けるとは限らない。だから、前評判を鵜呑みにはしない。大倉は笑いながら言う。
「もちろん期待はするけども、みんな春先のオープン戦が始まったあたりで化けの皮が剥げるものです。どれだけ球が速くても、コントロールがない、変化球がない、となったら、はっきり結果が出て来るから。そこで気付けるかどうかなんですよ」
「気付かせてもらった」と言う福山は、そこから、カットボールやシュートといった変化球の精度を上げることを意識し、持ち球を使って打者を打ち取るという投球術、配球術を学んでいった。
中大戦後、完封負けを喫した相手選手たちは、「低めから、曲げたり、落としたり。それを意識すると、スッとストレートが来る」と福山の投球を表現した。3年秋にして、やろうとしていることが、着実に形になり始めている。
だが、それが完成形ではないという。
「もちろん僕も速い球を投げたいし、そのための努力もしています。監督も、球速を上げていくことに否定的なわけではないし、自分自身もそれを求めていく中で、でも今の自分にはまだ150キロというボールは投げられない。投げられないならば、今ある武器で戦うしかないですから」
東都リーグの名門だけに、いずれも実績があり、地元では名前を知られた逸材だったはずだ。そんな投手たちのなかで、甲子園出場の実績はあるが、身長176センチとさほど大柄ではなく、150キロのストレートを投げるわけでもない。決して目立った存在ではなかったはずの福山は、いかにして見いだされたのか。
福山は「監督との出会いが大きかった」と言う。「監督」とは、駒大を率いる大倉孝一監督のことだ。
「スピードで勝負するのは難しいぞ」
入学早々に言われた言葉だ。
同期の10人だけでなく、上級生の投手もいる。ブルペンに入れば、誰もが力のあるボールを投げている。福山も、そういうボールを投げなければ通用しないと思っていた。
「そのボールを投げることが悪いということではなく、打者を抑えることを考えた時、それだけでは無理だ」
大倉監督はそう言った。
「速い球だけ投げたがってどうするの? そんな野球は甘っちょろい。レベルが低すぎる。今あるボールをどう使ったら0点に抑えられるのか。それを捕手と一緒になって考えて、内野手と連携して、そうやって野球というのは成立していくんだ」
ミーティングでは、そんな話をよく聞かされた。
それは大倉の、監督としての極めて現実的な感覚でもある。高校時代からプロに注目されて、鳴り物入りで入学してくる投手もいる。たしかに速い球を投げ、見栄えも良いが、そういった投手が必ずしも活躍し、期待通りにプロに行けるとは限らない。だから、前評判を鵜呑みにはしない。大倉は笑いながら言う。
「もちろん期待はするけども、みんな春先のオープン戦が始まったあたりで化けの皮が剥げるものです。どれだけ球が速くても、コントロールがない、変化球がない、となったら、はっきり結果が出て来るから。そこで気付けるかどうかなんですよ」
「気付かせてもらった」と言う福山は、そこから、カットボールやシュートといった変化球の精度を上げることを意識し、持ち球を使って打者を打ち取るという投球術、配球術を学んでいった。
中大戦後、完封負けを喫した相手選手たちは、「低めから、曲げたり、落としたり。それを意識すると、スッとストレートが来る」と福山の投球を表現した。3年秋にして、やろうとしていることが、着実に形になり始めている。
だが、それが完成形ではないという。
「もちろん僕も速い球を投げたいし、そのための努力もしています。監督も、球速を上げていくことに否定的なわけではないし、自分自身もそれを求めていく中で、でも今の自分にはまだ150キロというボールは投げられない。投げられないならば、今ある武器で戦うしかないですから」