9イニング平均の三振数はこの15年一貫して向上しており、05年の6.38に対して、19年は8.88となっている。もっとも、三振の蔓延が注目を浴びるようになったのはごく最近のことだ。18年より以前、三振数が安打数を上回るシーズンは存在しなかった。ところが21年、6月にMLB機構が取り締まり強化に乗り出した時点で、三振数は安打数を5000も上回るペースで推移していたのだ。
ただでさえ、ゆったりしたペースで進むことが常に懸念視されてきたベースボールというスポーツにあって、これはアクションの大幅減少に直結する。「私は以前から、フィールド上で行われるゲームが懸念を生じさせる形で変わっていることを指摘してきた」とマンフレッドは私に言った。「今後のルール変更の可能性についても、何度も話してきた。特に、ベースボールのように伝統が重視されるゲームでルールを変更しようというなら、違反行為を無視するわけにはいかない。この際、ルールの変更云々は忘れよう。これはすでにルールへの違反行為なんだ」
マンフレッドが言及しているのはルールブック3.01項だ。そこにはこう書かれている。「土やロジン、灯油、ヤスリ、エメリー研磨紙やその他の異物を使ってボールを変色させたり、傷をつけてはならない」。また、ルール6.02項C(投手の禁止行為)では3.01項をさらに発展させ、投手は「あらゆる種類の異物をボールに付着させてはならない」としている。「シャインボールやスピットボール、マッドボール、エメリーボールを含め、いかなる形でもボールを傷つけてはならない」「あらゆる種類の異物を身に着けたり、所有したりしてはならない」「手や指、手首には何も付けてはならない」。
これらのルールに違反した投手は10試合の出場停止処分(その間のサラリーは支払われる)を受ける。取り締まりが厳しくなってから最初の違反者が出るまでに7日を要した。6月27日、マリナーズのヘクター・サンティアゴが、クラブにベタベタした疑わしい箇所があるとして退場処分を受けた。本人はロジンバッグ(これはまだ合法とされる)に汗が混じっただけだと反論し、処分に不服を申し立てている。
この問題に関して、各チームは長い間ルールに背いてきた。あらゆるチームで、多くの投手がボールを握りやすくするために粘着物質を使っていた。大半は日焼け止めとロジンを混ぜたもので、不正行為とは考えられていなかった。多くの打者もこれを認めた。ピッチャーがボールの行き先を分かっていることが自分たちを守ることにつながると思っていたからだ。だが、一部の打者は今、後悔している。
「俺たち打者はバカだった。『コントロールを良くするためだからいいか。ぶつけられるのは嫌だからな』と考えていた」。強打者クリス・ブライアントは言う。「弱腰にもほどがある」
※後編へ続く
文●タイラー・ケプナー/『ニューヨーク・タイムズ』紙
【著者プロフィール】
ペンシルベニア州出身。13歳で自作の雑誌を制作し、15歳でメジャーリーグの取材を始める。大学卒業後、『シアトル・ポスト・インテリジェンサー』紙を経て、『ニューヨーク・タイムズ』紙でメッツ、ヤンキースの番記者を務め、2010年からナショナル・ベースボール・ライターとなった。Twitter IDは@TylerKepner。
ただでさえ、ゆったりしたペースで進むことが常に懸念視されてきたベースボールというスポーツにあって、これはアクションの大幅減少に直結する。「私は以前から、フィールド上で行われるゲームが懸念を生じさせる形で変わっていることを指摘してきた」とマンフレッドは私に言った。「今後のルール変更の可能性についても、何度も話してきた。特に、ベースボールのように伝統が重視されるゲームでルールを変更しようというなら、違反行為を無視するわけにはいかない。この際、ルールの変更云々は忘れよう。これはすでにルールへの違反行為なんだ」
マンフレッドが言及しているのはルールブック3.01項だ。そこにはこう書かれている。「土やロジン、灯油、ヤスリ、エメリー研磨紙やその他の異物を使ってボールを変色させたり、傷をつけてはならない」。また、ルール6.02項C(投手の禁止行為)では3.01項をさらに発展させ、投手は「あらゆる種類の異物をボールに付着させてはならない」としている。「シャインボールやスピットボール、マッドボール、エメリーボールを含め、いかなる形でもボールを傷つけてはならない」「あらゆる種類の異物を身に着けたり、所有したりしてはならない」「手や指、手首には何も付けてはならない」。
これらのルールに違反した投手は10試合の出場停止処分(その間のサラリーは支払われる)を受ける。取り締まりが厳しくなってから最初の違反者が出るまでに7日を要した。6月27日、マリナーズのヘクター・サンティアゴが、クラブにベタベタした疑わしい箇所があるとして退場処分を受けた。本人はロジンバッグ(これはまだ合法とされる)に汗が混じっただけだと反論し、処分に不服を申し立てている。
この問題に関して、各チームは長い間ルールに背いてきた。あらゆるチームで、多くの投手がボールを握りやすくするために粘着物質を使っていた。大半は日焼け止めとロジンを混ぜたもので、不正行為とは考えられていなかった。多くの打者もこれを認めた。ピッチャーがボールの行き先を分かっていることが自分たちを守ることにつながると思っていたからだ。だが、一部の打者は今、後悔している。
「俺たち打者はバカだった。『コントロールを良くするためだからいいか。ぶつけられるのは嫌だからな』と考えていた」。強打者クリス・ブライアントは言う。「弱腰にもほどがある」
※後編へ続く
文●タイラー・ケプナー/『ニューヨーク・タイムズ』紙
【著者プロフィール】
ペンシルベニア州出身。13歳で自作の雑誌を制作し、15歳でメジャーリーグの取材を始める。大学卒業後、『シアトル・ポスト・インテリジェンサー』紙を経て、『ニューヨーク・タイムズ』紙でメッツ、ヤンキースの番記者を務め、2010年からナショナル・ベースボール・ライターとなった。Twitter IDは@TylerKepner。