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MLB

「野球やってるなぁって感じが凄く楽しい」メキシコに近い田舎町で再起を期す安打製造機【秋山翔吾“最後の挑戦”:前編】<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.05.26

 前述の通り、メジャーの首脳陣はまず「◯打数◯安打」というような簡単な「結果」から見る。彼らがマイナー選手の守備や走塁を含め、その内容や詳細について現場に質問するのはそれからだ。

 秋山は翌日、さらに「結果」を出した。最初の3試合は下位打線だったのが、マイナー出場4試合目にして「1番・センター」で出場。この試合で彼は3点タイムリー三塁打を含む、6打数3安打3打点と大暴れした。

「久しぶりに良い感触で捉えられた。課題としては、インサイドの球にもう少しスムーズにバットが出てくれないかなと思う。結果は結果として受け止めて、内容をもっと詰めていきたいですね」

 謙虚というより、客観……いや、達観と言うべきか。いくら「結果」を残してもメジャーへ昇格できないこともある。だが、それでも「結果」を残さなければならないのがマイナーリーグという世界だ。
 
「メジャーにどんな選手が必要なのか? というのはその時その時だと思いますけど、まずは結果を出さなきゃならない。でも、結果だけじゃなくて、内容だったり姿勢だったり、仕草だったりだとか、ベンチでのコミュニケーションとか、すべての面で常に見られていると思ってやっています。そういうのは野球選手になってからは特に意識はしてますけど、どんな形でもいろんな人から認められるような形にしたいなと思います」

 その言葉通り、秋山は「ヒットが出るに越したことはないが、1本のヒットや、1試合の活躍で浮かれている場合じゃない」と至って平坦な気持ちでプレーしている。マイナーでの最初の4試合で20打数7安打6打点、打率3割5分と絶好のスタートである。

「結果的にヒットが出て、野球やってるなぁって感じが凄く楽しい」

 楽しい、なんて言葉を彼の口から聞いたのは、いつ以来だろう。

 思い出すのは、「楽しくない」ことばかりだ。去年の今頃、3安打した翌日にベンチを温めたこと。ヒットを打っても、守備でファインプレーを披露しても、状況が決して変わらなかったこと。すでに長打偏重主義に転じていたチーム事情のお陰で、控えに甘んじなければならなかったこと。そんな状況を打開するため、少しでも長打が出るように長年培った打撃を変えようとしたこと……。

 そして、今年の4月3日にレッズの開幕ロースターから外れたことが発表され、その2日後に自由契約となり、エルパソへとたどり着いた。

 その道のりは、とても平坦と言えるものではなかったーー。

【後編に続く】

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO

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