専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

西武復帰説も浮上した交渉の舞台裏。アメリカに引き留めた“夢物語”への微かな期待【秋山翔吾“最後の挑戦”:後編】<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.05.27

「ここでまたマイナー契約したら、2000安打は遠のくのでは?」と質問したが、それは心の中で『日本に帰った方が2000安打に近づくのでは?』と考えていたからだ。

「数字だけ見たら、遠のいているでしょうね」と彼は淡々と言った。

「でも、日本にいても怪我したかも知れないし、どこにいても数字を積み上げるのは簡単じゃないと思います。それにずっと日本にいて、2000安打みたいなものを目標に野球をやっていて、引退した時に、メジャーに行ける可能性があったけれど行かなかったという後悔は多分、出てくると思いました。やれる限りはアメリカで戦い続けたい」

「『やれる限り』って言ってもなぁ」と思った。期限はすぐそこまで来ている。もう、マイナー契約のオファーなんてないよ、と。

「26日の火曜日の段階で、代理人から米国のオファーはおそらく、もうないと思うという話をされました。それってもう、かなり強力な言葉じゃないですか? だから、30日まで待つとしつつも、日本のオファーに頭がシフトして、飛行機の便を考えて、(5月)1日にPCR検査をして、2日の便で帰国とまで考えていました」
 
 そしたらね、と秋山が言葉をつなぐ。

「水曜日(27日)にパドレスからマイナー契約の話が来たんですよ」

 なにを言ってんだ、こいつ? と咄嗟に思った。

「もう『イエス』って言いましたし、詰めの段階までは来ています。もう2往復ぐらい話をしてます。サインするまでは不安ですけど、不履行になるようなことはない。あとはどっかで身体検査して、エルパソに行くだけ」

 30分以上も話していて、最後の数分間で何の前触れもなく、突然、なされた告白だった。

 修復不可能なぐらい、感情が揺れ動いた。

 さっきまで張り詰めていたはずの緊張の糸が一気に緩み、言葉にするのが難しいほどの気持ちになった。心のどこかに「ハメられた」という思いもあったせいだろう、喜怒哀楽が全部出たような感じになった。

「米国でプレーすることを諦めかけていた中で、チャンスをくれたパドレスに感謝しています。こんなに短期間で劇的に動いていくものなのかという驚きも正直ありましたが、マイナー契約だけれど、メジャーに戻れる可能性がある。何としてももう一度、メジャーで戦いたいし、叶えたい」
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号