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高校野球

指導者に望みたい「自ら考える選手」の輩出。ドロップアウトが絶えないアマチュア球界の現実と課題

西尾典文

2022.06.02

日本代表として金メダル獲得にも貢献した伊藤。彼も一度は大学を変える決断をしたひとりだった。(C)Getty Images

日本代表として金メダル獲得にも貢献した伊藤。彼も一度は大学を変える決断をしたひとりだった。(C)Getty Images

 もうひとつ気になるのが、高校も大学も部員が大量に所属しているところである。

 高校では100人、大学では200人を超えるチームも存在しているが、公式戦でベンチ入りできるのは高校なら20人程度(甲子園は18人)、大学では25人であり、一度も出場できないまま卒業する選手も少なくない。

 一方で高校では部員が9人に満たずに複数の学校による連合チームも年々増えている。野球人口が減少していると言われて久しいが、ユニホームを着ていながらも、実戦でプレーすることなくスタンドで応援し続けている控え部員が大量にいるというのも不健全な状態ではないだろうか。

 学校経営などを考えると部員数の制限を設けるのは難しいかもしれない。だが、1つの学校から複数のチームが出場できる大会を増やすなど、選手が試合でプレーできる機会を増やすこともドロップアウトする選手を減らすためには必要だろう。
 
 まだまだ未熟な中学生や高校生が進路について適切な判断をするのは難しい。だからこそ指導者や保護者が何とかしないといけない、というのがこれまでの考え方かもしれない。しかし、そういったことを考える力を選手につけさせることこそが、本来大人が果たす役割ではないだろうか。

 アドバイスや必要な情報を提供するのはもちろん必要ではある。しかし、本人が何も考えず、また考える力を養う訓練を受けずに、大人の言いなりで進路を決めるというのはやはりあるべき姿ではないはずだ。

 将来の野球界はもちろん、社会全体を考えても、自らの意思で考える力を持った選手が1人でも多く輩出されるようなチームが増えるのを望みたい。

取材・文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

 

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