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MLB

MLBにあって日本のプロ野球にはない「トレード期限」の娯楽性。大谷移籍の噂で日本でも“エンタメ化”が進む?<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.08.10

 リゾーGMはソト放出後の会見でこう語った。

「(ソトのトレードは)正しい取引をするか、まったく取引をしないかの二者択一でした。(取引成立の)ハードルをとても、とても、とても高く設定し、1チームがそれを超えてきたから取引したのです」

 正しい取引を見つけられなければ、カブスのように、放出確実と言われていたウイルソン・コントレラス捕手やイアン・ハップ外野手をトレードせず、オフにFAになるまで待ってドラフト補償指名権を得るだけの話だ。

 エンジェルスも、オーナーが阻止したという話もある大谷翔平のトレードは別にして、出来うる限りの努力をしたと思う。

 オフにFAとなるノア・シンダーガード投手と、若手のブランドン・マーシュ外野手をフィリーズにトレードして、16年ドラフト全体1位指名で24歳の外野手ミッキー・モニアックと、2Aでプレーする強打の捕手ローガン・オーホッピー、21歳のハディエル・サンチェス外野手を獲得。さらに、4年契約を交わしたばかりの守護神ライセル・イグレシアス投手をブレーブスへトレードし、26歳の左腕タッカー・デビッドソン投手も獲得した。
 デッドライン後に更新されたプロスペクト・ランキングで、オホッピーはチーム1位、デビッドソンは11位、サンチェスは29位に入った。マイナー組織がグレードアップされたことは間違いない。

 それでも、「もしも大谷がトレードされていれば、エンジェルスはどんなレベルの有望株を獲得できたのだろう?」と考えてしまうのが、「トレード期限」というものである。

 日本で「大谷放出」が話題になったのも、ファンが「トレード」をひとつの「娯楽」と捉えているからだろう。選手の雇用形態が違うので、日本のプロ野球にMLB流の「トレード期限」をそのまま当てはめるのは難しいだろうが、ライオンズの山川穂高内野手や森友哉捕手のFA権取得が話題になったぐらいだった。「トレード期限」という「Entertainment=娯楽」を歓迎すべき土壌が、ファンやメディアを中心に出来つつあるのではないか? と感じる今日この頃である――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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