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『与作』の「ヘイヘイホー」に合わせてストレッチ?今季限りで引退した偉大な強打者プーホルスの意外な素顔<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.10.12

 11年、プーホルスにとってのカーディナルス最終年。2度目のワールドシリーズ優勝を果たした時、フリー・エージェントになる彼の退団はすでに明らかとなっていた。それはカーディナルスの経営陣が、プーホルスが08年から2年連続でMVPを獲得したにもかかわらず、「年齢によるパフォーマンス劣化の兆候が見られるスター選手に高額年俸は支払えない」とメディアを通じて喧伝していたからだ。当時、プーホルスは「野球はビジネスだし、それについては理解している」と言った。

「唯一、苦い思いがあるとしたら、それは自分が(高額年俸を要求する)悪者にされたことだろうね」

 結果として、カーディナルスの「読み」は的中し、プーホルスはエンジェルスで次第にコストパフォーマンスを落としていくわけだが、それでも彼はカーディナルスで過ごした年月を、「特別な時間だった」と言った。

「毎日、4万人を前にプレーするのが楽しかったし、チームを勝たせるために力を尽くした。3度もワールドシリーズに出場し、そのうち2度も勝てたんだ。あの街で成功した事実を僕から奪うことはできないし、素晴らしいチームメイトと素晴らしい思い出がある」f
 そのプーホルスとモリーナが今季限りで引退する。ウェインライトが2人に同調するのかどうかは現時点では分からないが、開幕戦から、3人が登場するたびにブッシュ・スタジアムは異様な熱気に包まれ、「これが最後」的な雰囲気は、ワイルドカード・シリーズでも再現されていた。

「僕の使命はいつでも、このチームが毎日、勝つために貢献することだった」

 最後は残念な結果に終わったものの、そう言ったプーホルスの表情はどこか安堵に満ちていた。それは彼が現役生活の最後に、かつてドラフト13巡目(全体402位)指名で入団したチームのユニフォームを着ていたことと無関係ではないだろう。

 エンジェルス時代の14年や、ドジャース時代の昨年にもプレーオフに進出しているのだが、それらの記憶はカーディナルス時代の濃厚な記憶を上書きすることはできなかった。

 アルバート・プーホルスと言えばやはり、セントルイス・カーディナルス。その黄金期の礎を築いたスーパースターなのだから――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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