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MLB

「それでメシ食ってるんだから、練習なんて当たり前でしょ」寛容に淡々と自分の流儀を貫いた福留孝介のメジャー生活<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.09.28

メジャーでは5年間で498安打。1年目にはオールスターにも出場した。(C)Getty Images

メジャーでは5年間で498安打。1年目にはオールスターにも出場した。(C)Getty Images

 福留孝介の打撃を初めて見たのは、彼がPL学園の主砲として甲子園に出場した時のことだ。テレビで見ただけで、『こんなに思いきり、バットを振り切る?』と驚いた。

 初めて”生”で見たのは、第1回WBCの準決勝、韓国戦で代打2点本塁打を放った時だった。日本生命を経て中日ドラゴンズ入りした彼が遊撃から外野へ転向し、すでにMVPや首位打者のタイトルを獲得していたのは知っていたが、やはりあの豪快無比なスイングに驚かされたものだ。

 現役最終打席でも、その雄姿はまったく変わらなかった。

 バットを背中の後ろまで振り切り、その反動でクルリと回るように投げ捨てられたバット。YouTubeの「燃えドラch【CBCテレビ公式】で最後の打席を見た時、それらとは違うシーンを思い出した。

 2008年3月31日の月曜日、カブスの本拠地リグリー・フィールドで行われたブルワーズとの開幕戦。0対3で敗色濃厚だった9回、無死一、二塁から、メジャー1年目の福留が相手のクローザー、エリック・ガニエから起死回生の同点3点本塁打をセンターに放った。
 ナショナル・リーグ最古(1914年開場)のリグリーは、現オーナーが大掛かりな改修工事をしてくれたおかげで現在は改善されたが、当時は二階席下のコンクリートが落下する事故が起きるほど老朽化していた。同点スリーランが出た直後、ホームベース裏の最上階にある取材席がグラグラと揺れた。問題ありの二階席の上で大喜びし、無邪気に飛び跳ねる観客を眺めながら、「アカンで、アカンで」と結構、真面目に心配したものだ。

「自分が納得できたスイングっていうのは、あれだけだろね」

 翌年、正式に「福留番」として取材することになった時、当の本人からそう聞かされた。1年目の、日本風に書けば「打率.257、10本塁打、58打点」という成績に納得できるはずがない。出塁率.359は高く評価されたものの、「(中地区に優勝した)チームを勝たせるためにようやったとか言われても、自分の打撃がちゃんとできてたら、もっと貢献できたからね」と、キャンプから時間を見つけては打ち込んでいた。

 彼は当時、よくこう言っていた。

「それでメシ食ってるんだから、練習なんて当たり前でしょ」と。
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