佐々木朗希を含めたロッテ投手陣を今年任されたのが、現役時代は”ジョニー”の愛称で多くのファンから愛されてきた黒木知宏氏。吉田さんはこの４年間、ロッテ戦中継で何度もコンビを組んできた。

「黒木さんは現役時代、『魂のエース』と呼ばれて、気持ちを前面に出して投げる『気合の権化』みたいな投手でした。それが解説者になって、メジャーリーグも担当する中で話しをさせていただいくと、昔から持っている気合の部分と現在の超データ分析の野球が、黒木さんの中で融合しているんですよね。だから素晴らしいピッチングコーチになるんじゃないかとずっと思っていたので、いいタイミングでコーチになられた。大谷翔平がプロ入りしてから、アメリカに巣立つまでの５年間を日本ハムのコーチとして全部見ていますし、朗希君にも他の投手にもいい影響を与えるんじゃないかと思っています」

　さらにこう続ける。

「古臭い考え方かもしれませんが、最近ちょっと蔑ろにされている「気合」だとか「熱さ」だとか、そういう部分も持ちつつというのが、黒木さんのいいところだと思っているので、朗希君を含めた今の若い投手陣をどう動かしてくれるのかっていうのは、興味がありますよね」

　最後に、吉田さんが今後の佐々木朗希に期待していることを聞いた。

「僕が望んでいるのは、狙って右バッターのインサイドに『ズバン！』って、ストレートを投げて欲しいんですよね。まだ全然見せてないんで、これを使うようになったらヤバいですよ。今シーズンに限れば、開幕投手だったら『開幕ノーヒットノーラン』、あとは『２年連続完全試合』ですね。もう底が知れないです。いくら妄想しても、あっちが上回りますからね。我々マリーンズファンはまだまだ朗希君に関しては、いっぱい夢を見られるんですよ。彼をリアルタイムで見られて幸せですよ」
  　終始「１マリーンズファンのおじさんですから」と、謙遜しながらもマリーンズと佐々木朗希について、１時間以上も語ってくれた吉田さん。去年は完全試合の翌週、あわや２試合連続完全試合となる８回パーフェクトピッチングの実況していたが、今までの価値観が崩れるような出来事を目の当たりにし、驚くより呆れてしまったという。

　そんな周囲の想像を超える佐々木朗希を、この先何度でも見たいという吉田さんの思いが実現するのか。まもなく始まるWBCで世界を驚かせ、そしてシーズンでも圧巻の投球を見せる姿を「１マリーンズファン」の吉田さんとともに、楽しみに待ちたい。

取材・文●岩国誠

【著者プロフィール】
岩国誠（いわくにまこと）：1973年３月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のＡＤとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。