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MLB

WBCの熱狂から遠く離れた場所で――泰然自若と開幕メジャーを目指す筒香嘉智の「今」<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.03.16

 レンジャーズ公式サイトのロースター欄には、各ポジションでの選手の序列をまとめた「Depth Chart」が掲載されている。

 筒香は契約当初、外野手として登録されており、今も「Left Field」欄に24歳の右打者ババ・トンプソンや、25歳の左打者ジョッシュ・スミスに続く、3番目に名が記されている。どちらも期待の若手ではあるが、順番はあまり関係ない。事実、筒香に続く4番目には、31歳のベテラン左打者、トラビス・ジャンコウスキーや、レギュラーの最有力候補で33歳のスイッチヒッター、ロビー・グロスマンが名を連ねている。
 
 注目すべきは、筒香に考えられる他のポジション、指名打者と一塁手だ。

 レンジャーズ公式サイトのDepth Chart欄の指名打者には、ともにシーズン30本塁打以上の実績を誇る右のミッチ・ガーバー(捕手)や左のブラッド・ミラー(三塁手)の名が記されており、筒香もその末端に名を連ねている。ガーバーもミラーも年間を通じての安定性という面では不安があり、そこに付け入る隙はある。

 一方、一塁手には、筒香のレイズ時代のチームメイトで昨季27本塁打を記録したネイサニエル・ロウと、筒香しか記されていない。ガーバーも一塁の経験者で、必ずしも「チャンスあるやん!」とは言えないが、複数のポジションを兼任できるということが、昨今のメジャーリーグでは大きな武器になる。

 かつてのように「指名打者=守備力の低い強打者」というセオリーを無視したチームが増え、ベテラン選手の負担を減らすために指名打者という「枠」を使うことの方が多いので、筒香がオープン戦20試合(出場はその半分から3分の2程度になるだろう)で結果さえ残せば「開幕メジャー」、彼にとっては「メジャー復帰」がかなり現実的なものとなる。

 そして、その援軍となりそうなのが、彼が言う「日本で使っていたバット」だ。

 渡米1年目の20年、実はDeNA時代のミズノ社製バットがメジャーリーグの規定外で使えなかった(バットが折れた時の安全性にリンクした密度の問題らしい)。

「それはもう、こっちに来てから『これじゃない、あれも駄目』って感じで、いろいろ試したけど、結局、日本で使ってたバットほど感触に合うバットには出会わなかった」と話す。

「もちろん、自分が日本でずっと使ってきたバットですので、すごく感覚も違う部分もありますし、バット以外の面でも、心も身体も今年はすごく充実しているので、すべて含めて楽しみです」

 筒香がオープン戦デビューを果たしたのは、それから4日後、敵地でのアスレティックス戦でのことだった。

 結果は途中出場で3打数2安打3打点。案の定、外野ではなく、一塁手としての出場だった――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
 

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