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プロ野球

イニングイーターの髙橋、背中で語る今井、“佇まい”の平良――西武の三本柱が見せる三者三様のエース像<SLUGGER>

氏原英明

2023.05.06

 エースとはどうあるべきか。その考え方は色々あっていい。

 今井の意見はもっともだし、平良が見せている勝負強さもまたエースと言える。これまで開幕投手を3度務め、長いイニングをこなす高橋もエースと言えるだろう。しかし、トリプルエースのチームにも不安がないわけではない。それは、今の西武に確固たる「エース論」を語れる物差しがいないことだ。

 例えば、菊池は先輩の岸孝之(現楽天)の背中を見ていた。その岸も、年下ながらに涌井秀章(現中日)の姿を知っていた。そして、涌井は松坂大輔の背中を見て育った。

 しかし、今の3人は菊池がエースとして君臨している様子をそばで見ることはなかった。

「エースと言われる立場の人間には勝ち負けではなくて、ボール1球にも意味を持たさなきゃいけない。抑えればいいってもんでもないんですよ。岸さんがそうだったし、雄星もそう言うピッチャーになってほしい」
 

 そんな話をかつてしていたのは、歴代のエースの球を受けてきた捕手の炭谷銀仁朗(現楽天)だ。
 
 菊池がエースに成長していく過程で炭谷の存在は大きかったが、その彼も現在は別のチームにいる。今の西武にはかつてのエースも、それを支えた女房役もいないのだ。

 それだけに、髙橋、今井、平良の3人が競争関係を作り出す中で、誰がどういう形でエースになっていくかが、今後数年の西武の浮沈を左右するだろう。

 5月3日の試合後の松井監督の談話に戻る。

「これまでの光成の姿が、今井のピッチングや今日の平良にも影響したと思うし、こうやって平良がいいピッチングをしてくれたんで、今度は光成にいい刺激になるんじゃないかと思います」

 遜色なきエース候補の3本柱それぞれが、どのようなエース像を描いたピッチングを見せてくれるのか。今季は真のエースを探す1年になりそうだ。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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