その成長曲線は、常に「右肩上がり」だった。1年目の6月、2軍対3軍の練習試合で「3軍先発」を務めた千賀は、いきなり149キロをマークし、周囲の度肝を抜く。「もちろん、覚えています」と千賀は、その投げた感触すら、その手に残っているという。
「それが成功体験なんです。やったら、やった分だけ必ず返って来る。その下地ができたと思います」
入団時の体重は75キロ。それが1年で81キロまで増えた。今季からプレーするメッツでの公称体重は202ポンド(約91.6キロ)。地道なトレーニングの成果ともいえる筋肉の増強ぶりに足並みをそろえるかのごとく、「お化けフォーク」と言われる千賀の宝刀にも、さらに磨きがかかっていく。
最大落差42インチ(約107センチ)という魔球は、今から10年前のプロ3年目、若きセットアッパー候補として1軍の座を争っていた頃、体調不良から2軍行きを命じられ、キャッチボールすらせず、数日休んだその直後に、開花の時を迎えたという。
「フォームをいろいろ試してみたときに、体を開かず、三塁側を向いたまま投げたら、ストンと落ちたんです」
千賀の投球フォームを見ると、体の中心軸をぶらさず、振り上げた左足が地面に着地するギリギリまで、その胸が三塁側方向を向いている。つまり、最後の最後まで体が開かない。その我慢を生むのも、体の強さがなければできないことなのだ。
同期の牧原は、入団当初の千賀が「フォークを投げても、ひどいとき、マウンドと本塁の間くらいに叩きつけていたこともあったんですよ」と明かしたうえで「あいつのすごいところは、常に追求していた、ということなんですね」と語る。ソフトバンクでの12年間、千賀の球を受け続けてきた甲斐も「練習はすごくしていたし、みんながその姿を見ていましたから」と認める。
「だんだん一歩ずつ、スピードが上がっていったんです。2軍で投げて、1軍で投げて、背番号も変わる。そうすると、ちょっとずつ環境が変わっていった。変われば変わるほど、見える景色が変わってくる。だから今の立場でも、また違う景色が見えています」
自らの足で、着実に次なるステージにつながる階段を一歩ずつ上がって来た。そして今、世界最高峰のマウンドに立ち、フォークでメジャーリーガーたちをきりきり舞いさせている。その景色が、千賀の目には、どう映っているのだろうか。そのサクセスストーリーは今もなお、ページが増えている真っ最中なのだ。
取材・文●喜瀬雅則
【動画】「落ち方がヤバい」メジャー5勝目を挙げた千賀滉大のお化けフォーク!
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「それが成功体験なんです。やったら、やった分だけ必ず返って来る。その下地ができたと思います」
入団時の体重は75キロ。それが1年で81キロまで増えた。今季からプレーするメッツでの公称体重は202ポンド(約91.6キロ)。地道なトレーニングの成果ともいえる筋肉の増強ぶりに足並みをそろえるかのごとく、「お化けフォーク」と言われる千賀の宝刀にも、さらに磨きがかかっていく。
最大落差42インチ(約107センチ)という魔球は、今から10年前のプロ3年目、若きセットアッパー候補として1軍の座を争っていた頃、体調不良から2軍行きを命じられ、キャッチボールすらせず、数日休んだその直後に、開花の時を迎えたという。
「フォームをいろいろ試してみたときに、体を開かず、三塁側を向いたまま投げたら、ストンと落ちたんです」
千賀の投球フォームを見ると、体の中心軸をぶらさず、振り上げた左足が地面に着地するギリギリまで、その胸が三塁側方向を向いている。つまり、最後の最後まで体が開かない。その我慢を生むのも、体の強さがなければできないことなのだ。
同期の牧原は、入団当初の千賀が「フォークを投げても、ひどいとき、マウンドと本塁の間くらいに叩きつけていたこともあったんですよ」と明かしたうえで「あいつのすごいところは、常に追求していた、ということなんですね」と語る。ソフトバンクでの12年間、千賀の球を受け続けてきた甲斐も「練習はすごくしていたし、みんながその姿を見ていましたから」と認める。
「だんだん一歩ずつ、スピードが上がっていったんです。2軍で投げて、1軍で投げて、背番号も変わる。そうすると、ちょっとずつ環境が変わっていった。変われば変わるほど、見える景色が変わってくる。だから今の立場でも、また違う景色が見えています」
自らの足で、着実に次なるステージにつながる階段を一歩ずつ上がって来た。そして今、世界最高峰のマウンドに立ち、フォークでメジャーリーガーたちをきりきり舞いさせている。その景色が、千賀の目には、どう映っているのだろうか。そのサクセスストーリーは今もなお、ページが増えている真っ最中なのだ。
取材・文●喜瀬雅則
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