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プロ野球

ソフトバンクは黄金ルーキー前田悠伍をスケールの大きい投手に育てられるか? 「1年目からのデビューは?」の声も上がるが…

氏原英明

2024.02.19

ブルペンでは30球弱を投げ込んだ。「特別育成プログラム」の下で今後どのような成長を遂げるか楽しみだ。写真:氏原英明

ブルペンでは30球弱を投げ込んだ。「特別育成プログラム」の下で今後どのような成長を遂げるか楽しみだ。写真:氏原英明

 小久保監督も前田の初プルペンに驚嘆する一方で、こんな課題も口にしている。

「やっぱりバッターが立ったときにどうか。課題がいっぱい出てくると思う。(前田は)曲がり球がそんな得意じゃない。チェンジアップが得意。チェンジアップの方が覚えるのが難しいので、そこはいいと思いますが、曲がり球の精度を上げるということでしょうね」
 
 課題を認識しているということはそれだけ大きく育てることの重要性を理解しているからに他ならない。しかし、先ほども書いたように、メディアが「早く見たい」と騒ぎ立てそれに呼応するようになってしまうと計画は丸潰れになってしまう。

 事実、小久保監督は「肩肘に問題なければ、早い段階のデビューもある」といってしまっているし、前田も「早く一軍に上がって初勝利を挙げたい」と口にしてもいる。

 育成計画をどこまで遂行できるか。そもそも、今年で43歳の和田毅が開幕投手の候補に上がるほど、今のソフトバンクは先発陣の伸び悩みが顕著だ。今、目指すべきは高卒の前田の早期デビューではなく、彼に頼らない投手陣の形成だろう。

「(前田を)早く上げてくれって言わないようにしたい」と小久保監督が言った時、報道陣からは笑い声がたくさんあった。笑い事ではない。ソフトバンクの投手陣復活は、前田の長期育成にあると言えるだろう

 甲子園を沸かせた大投手を「早く見たい」のか、「長く見たい」のか――。

 ソフトバンクの育成力のお手並み拝見と行きたいところだ。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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