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MLB

「父の死」だけが理由ではなかった…あれから27年、“バスケの神様”マイケル・ジョーダンのMLB挑戦を振り返る【前編】

出野哲也

2020.04.21

 特別待遇も求めず、遠征の際に宿泊する安宿にも、目的地まで12時間かかるバス移動にも不平を漏らさなかった。ただしそのバスは、ジョーダン自身の希望で調達した新型ではあった。代金はジョーダンが支払ったと言われていたが、実際はバス会社がジョーダンのサインを車体に記す条件で提供した。

 そうは言っても、やはり特別な存在だったのは間違いない。普通のマイナーリーガーは、監督のテリー・フランコーナ(現クリーブランド・インディアンス監督)とトランプを楽しんだり、一緒にゴルフコースを回ったりはしない。ロッカールームに「友人」としてNBAのスーパースター、チャールズ・バークリーが顔を見せることもないし、相手チームの捕手からサインをねだられもしないはずだ。
 
 そして、30歳を過ぎて打率1割台の外野手がレギュラーで起用されることも絶対にない。客観的に見れば、ホワイトソックスは本来若手に与えるべき貴重な出場枠を無駄遣いしていたわけで、それ自体が「特別扱い」であった。
【後編へ続く】

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。

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